解読不能
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「おい、お前」
顔を上げた俺を見下ろす、眼鏡をかけた青年。見た感じ22、3歳くらいか?
「それ渡せ」
「これは………一般人が持ってちゃいけないモンだ」
俺の経験が確かなら、パックに入っているこの粉は───覚醒剤。
だから渡せない。俺は眼鏡の男を睨み付けた。
「一般人が持ってちゃいけないって分かってんなら早く渡せ」
「売る気かよ?」
「……はぁ………」
溜め息を吐かれた。溜め息を吐きたいのはこっちの方だ。
学校は目と鼻の先にあるのに未だに辿り着けてないんだから。二時間目終了のチャイムが鳴っていた。
「関東信越厚生局麻薬取締部の捜査官・倉林だ」
「え?」
スッと目の前に差し出された麻薬司法警察の字を凝視する。この男、麻取だったのか……。
「だからそれ渡せ」
「はい……」
俺は大人しく覚醒剤入りのパックを倉林さんに渡した。あぁ何だか無性に恥ずかしい。
目を逸らすと他の捜査員がチンピラに手錠をかけていた。差し詰め覚醒剤取締法違反ってトコか?
「それじゃ、俺はこれで………」
「待て。お前にも詳しい事情を聞きたい」
さっさと退散しようと背を向けたが倉林さんに腕を掴まれた。
放してくれない、よなぁ……。
「乗れ」
今日の俺はトコトン運が悪いらしい。
時計は壊すしチンピラに遭遇するし、おまけに麻取に連行(俺は悪くないぞ!)されるなんて………。
春の日差しが憎らしいくらい眩しかった。
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