解読不能
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「そうだ、蒼衣くん!」
「うおっ!?」
急にガバッと起き上がる衛藤さんにめちゃくちゃ驚いた。な、何だ……?
「裕哉、どうしたっ?」
「帰りにちょっと寄っていきたいところがあるんだけど、いいかな?」
「あぁ、いいよ」
快諾すると衛藤さんはにっこり笑った。すると広夢は唇を尖らせてこう言った。
「帰宅部はイイよなぁ、寄り道できて」
ちなみに広夢は化学部とフェンシング部を掛け持ちしている。放課後や休日は忙しい身だ。
しかも3年だから最後の大会になるせいか去年以上に忙しい。
対する俺はというと、中学のときは陸上部だったけど高校では部活に入っていない。裕哉もまた然り。
「まぁまぁ。部活頑張れよ!」
そう言った後、チャイムが鳴ったことでこの会話は終わった。
「寄りたいとこって事務所だったんだな」
麻取の事務所に来たのはこれで三度目になる。相変わらず忙しそうだ。
キョロキョロと見渡すも、梶さんと比企さんの姿は見当たらない。
梶さんはともかく、部長の比企さんまでいないのか? ……変なの。
「梶さんから蒼衣くんをここに連れてくるようにって、ハルを通じて頼まれたんだ」
「………何かあったのか?」
そう訊くと衛藤さんは首を振る。そして、話があるみたいだよ、と言った。
話なら家でも………って、遅くなるんだったな。
「そこに座って待っててね」
コーヒーを出されたので大人しくソファーに座った。
そして出されたコーヒーに角砂糖を数個入れ、スプーンで混ぜる。
話ねぇ…………進展があったのかな? でもたった数日で進展なんてしないだろう。
てか、本当に俺を狙ってる奴らは多分相当頭がいいんだろうな。
いずれも襲ってきた場所は人通りの少ないところだし、直接手を出さないことで捕まる可能性は低くなる。
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