解読不能

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砂糖が溶けきってもなおスプーンでかき混ぜる。ほとんど無意識の行為だ。

混ぜるのをやめてコーヒーを一口飲む。甘い。角砂糖4つはさすがに甘かった。



「待たせたな」



振り返ると梶さんと比企さんがいた。比企さんは衛藤さんに目配せをして退室させる。

部屋には俺を含めて三人だけ。二人は向かい側に腰を下ろした。



「梶さん、話って何?」

「………率直に訊く。沖田さんとお前はどういう関係なんだ?」

「!!」



思ってもみない質問に動揺してしまう。カズキ兄ちゃんを知ってるのか……?

差し向かう二人の表情はいつもと変わりなくて感情が読めない。

黙っているわけにもいかず、俺はゆっくり口を開く。



「小さい頃、カズキ兄ちゃんに遊んでもらってた。頻繁にってわけじゃないけど」



すげー忙しいのに時間を作って一緒に遊んでくれた。身を守る術も教えてくれた。

そして────血の繋がった親なんかより、ずっと深い愛情を与えてくれた。



そこまで至ってある疑問が浮かぶ。

何で二人は俺たちに繋がりがあることを知ってるんだ? 一部の人間しか知らないはずなのに……。



“一部の人間”



それは俺の親の罪を知る者。俺と親戚を除けば、警察と麻取だけのはず。

もしかして。



「二人は……カズキ兄ちゃんの、部下だった……?」



8年前、カズキ兄ちゃんは30歳だった。梶さんと比企さんが部下でもおかしくない。



「あぁ。俺たちは沖田さんの部下だった」

「…………」

「第一発見者・神崎蒼衣。被害者・沖田一輝の自宅近くに住んでいる10歳の少年。被害者と面識有り」



比企さんがすらすらと並べ立てた言葉は多分8年前の事件の資料の一部だろう。




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