解読不能
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「全然気付かなかったよ。あの少年がまさか君だったなんて。
覚えてるかな? 現場で僕と梶くんに会ったんだよ」
「……覚えてない、です」
カズキ兄ちゃんのことだけで頭がいっぱいだったし。まさかそんな昔に二人と顔を合わせていたなんて……。
「俺たちも忘れてたんだ。けど、お前の部屋であの写真立てを見て思い出した」
「……写真立て……」
カズキ兄ちゃんと撮った写真のことだろう。見える位置に置いてたからな……。
「…………こんなこと聞いても何の役にも立たないと思いますけど」
「それがそうでもないんだ」
「え?」
梶さんも比企さんも渋い顔つきをしている。何なんだ……?
「最初に蒼衣くんを襲ってきたチンピラが持っていた覚醒剤の名前、覚えてるかい?」
「ZER0」
「それとよく似た名前の覚醒剤───ZEROって言うんだけど、それが一度麻取を騒がせたことがある。
それが八年前、沖田さんが担当していた事件なんだよね」
繋がった。八年前と今が。
「そういうわけだ。蒼衣、何か思い出さないか?」
「俺が知ってることは……八年前に全部喋ったよ」
話を切り上げるために立ち上がる。
言葉通り八年前に全部喋ったんだから今さら何も話すことは無いしな。
「それじゃ」
「おい、蒼衣!?」
梶さんの制止を振り切って俺は走って麻取事務所を出た。
「はぁ……っ」
全力で走って着いた先は小さい頃によく遊んだ公園。そして、カズキ兄ちゃんが殺された現場でもある。
無我夢中で走った。何キロくらい走ったんだろ……。
この公園はマンションからもアパートからも麻取からも少し遠い場所にある。
「ふぅ……」
少し塗装の剥がれたベンチに腰掛ける。公園には誰もいない。
今の子供は家の中でゲームか塾だもんな。そんなに学力が大事か? 理解できねー。
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