解読不能

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「……喉、渇いた」



まだお茶残ってたっけ、と鞄を漁る。残念ながらペットボトルは空。

買いに行くか……確か近くにコンビニがあったよな。

立ち上がって公園の入り口へ向かうと、



「何してるんだ、お前」



バッタリ倉林さんに会ってしまった。……そっか、この公園って学校の近くだった。



「ちょっとコンビニに……」

「…………」



無言で俺についてくる倉林さん。どうやら俺に逃げ場は無いらしい。

近くのコンビニでペットボトルのお茶と新発売のチョコを買って再び公園へ戻る。



「事務所から逃げてきたんだろ?」



ベンチに座った途端、倉林さんはそう言った。

……やっぱ知ってたか。保護対象が逃げ出したら捜査官に知らされるよな。



「そうですけど」

「よく逃げ切れたな」

「俺、元陸上部なんで足の速さは負けませんよ」



と言っても俺は長距離専門だったけどさ。でもさっき息切れしてたし、体力落ちてるかも……。

今度からランニングしようかな、などと考えながらお茶を飲んだ。



「ぷはー」

「ノンキなこった。お前、狙われてる自覚無いだろ」



カチ、と音がして振り向くと倉林さんがタバコに火をつけていた。煙が風で横倒しになる。

狙われてる自覚は思いっきりあるけどな。現に襲われてるんだし。



「一息ついたなら帰るぞ。梶さんが心配してる」

「え?」

「ほら」



差し出されたケータイには梶さんからのメールが数通。

『蒼衣と連絡がついたら教えてくれ』とか『様子はどうだ?』とか。



今になって、飛び出してきた自分が恥ずかしい。家出をやめて帰るみたいな気分だ。



「行くぞ」

「……はい」



遠ざかっていく倉林さんの背中を追いかけた。




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