解読不能
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灰色の雲に厚く覆われた、やけに近い空。雨が降りそうな天気だったのを覚えてる。
「梶くん、そっちはどう?」
「大した進展は無い。お前の方はどうなんだ? 比企」
まだまだ新人の麻取だった俺と比企は二人である事件を調べていた。
「僕、これから張り込みなんだ。行ってくるね」
「あぁ。気をつけて」
比企を見送った後、俺はパソコンに向かう。やらなきゃいけないことはいつだって山積みだ。
一課の執務室にいるのは俺と上司の沖田さんだけ。あとは皆出払っていた。
互いに口下手だから会話は無く、ひたすらキーボードを打つ。
そしてしばらく経って、静まり返った空間を切り裂くように、
「梶山くん」
と呼ばれた。
はっと顔を上げると沖田さんは上着を着込んでいた。
「少し出てきますね」
「分かりました」
「あまり無理をしてはいけませんよ? 程々にして帰りなさい」
そう言って出ていった沖田さんは三時間以上経っても帰ってこなかった。
きっちりしている沖田さんが連絡も無しに珍しいな………。
そうは思ったが、途中で仕事でも入ったんだろうと思い直し、目の前の仕事に没頭した。
そして夕方、一本の電話が入った。警察からだった。
「は……?」
『そちらの捜査官の沖田一輝さんが公園で死んでいたんです』
沖田さんが…………死んだ?
そんな、まさか。
何かの冗談だと思ったけど、俺は張り込みから帰ってきた比企を連れて教えられた公園に向かった。
着いたときには鑑識が公園を隅々まで調べているところだった。近くの警官に手帳を見せると、すぐに案内される。
「……沖田、さん……」
仰向けに地面に横たわっているのは紛れもなく自分たちの上司。
ナイフでめった刺しにされており、大量の血が地面に広がっていた。
マジかよ……。
俺も比企も無言で立ち尽くすしかなかった。
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