解読不能

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「蒼衣っ!」



急に梶さんが飛び出してきた。何で、と思う前に俺は梶さんに向かって倒れ込んだ。



「……っう……!」



顔を上げると、梶さんを押し倒すような形で俺は跨がっていた。

この体勢、人に見られたらヤバいだろうな。放課後で人がほとんどいないのが幸いだ。

俺は下敷きにしてしまった梶さんに声をかける。



「梶さん? 大丈夫か?」



だが声をかけても梶さんは黙ったまま。心配になって俺は顔を覗き込んだ。














逆光でよく見えないはずなのに、蒼衣の綺麗な瞳と唇から覗く赤い舌は不思議なくらいよく見えた。

少し頭を打ったせいか、はたまた俺の深層心理なのか。



……キスしたい。



そんな欲望が頭の中を支配する。心は理性が働いているからか拒絶している。

けど体はそんな心とは反対に動き出す。体は蒼衣を欲していた。



「梶さん? 大丈夫か?」



ダメだ、ダメだ、ダメだ……!!

そうは思うものの、手はいつもよりぐんと近くにある蒼衣の頭に伸びる。

抵抗は無駄に終わり、俺は蒼衣の後頭部を押さえつけて強引に口付けた。



「!? んぅ……っふ、」



誘うような瞳が、唇が、舌が、悪いんだ。そう決めつけて。

苦しいのか蒼衣はシャツの襟を掴んでくる。それすらも今の俺にとって煽る材料でしかない。

一旦唇を離して酸素を与えてやる。肩が上下しなくなったところを見計らって、今度は深く口付けた。



歯列をなぞって、ザラつく舌を絡ませて、吸い付いて。

いつの間にか俺だけでなく蒼衣も夢中になって互いを求めていた。

舌と舌が奏でる、男女の情事を思わせる水音に聞き入っていたのかもしれないし、もしかしたら。



制服越しに細い腰を掴んだその時、チャイムの音が静まり返った学校に響いた。

そこで、目が覚めた。




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