解読不能
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「ハルと連絡がつかないだと?」
いつものように朝メシを作っていると梶さんの焦った声が聞こえてきた。
倉林さん……どうかしたのか……?
梶さんの様子を伺いながら焼き上がったばかりのトーストを皿に乗せ、テーブルに置く。
残りもののジャーマンポテトに出来立てのスクランブルエッグ、ベーコン、サラダ。こんなもんかな。
マグカップからはコーヒーの湯気が立ち上ぼり、嗅覚を刺激してくる。手軽に消化を促進するにはぴったりだ。
「あぁ…………そうか」
電話をしながら荷物を纏める梶さん。この様子じゃ朝メシは食っていけそうにないな……。
少し冷めたトーストを手に取り、耳を包丁で切り落として半分にしてレタスを乗せる。
「お前はいつも通り蒼衣といろ。比企には連絡したか?」
その上に片方にはスクランブルエッグを乗せて軽く塩胡椒、もう片方にはベーコンとチーズを乗せて挟んだ。
即席サンドイッチ擬きをラップで包み、紙袋に入れた。朝っぱらから大変だなー麻取は。
「あぁ……分かった。また連絡する」
電話を切って上着を羽織った梶さんに紙袋を差し出した。
「忙しくても朝メシは食えよな」
「ありがとう。……じゃあ行ってくる」
わしゃわしゃと俺の髪を乱して梶さんは飛び出していった。……さて、メシ食うか。
「いただきます」
久しぶりの一人の食事。少し前までは当たり前のことだったのに、今は一人の方が珍しいだなんてな……。
すっかり冷めてしまったトーストにマーマレードを塗り、かじりつく。
「何か……寂しいな」
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