解読不能

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それから間もなく、父さんを殺した人間――沖田一輝は殺された。

そして俺は10歳にしてZEROのトップとなった。

18歳となった今でもあの人や父さんの腹心の部下に支えられながら、組織のトップと学業を両立させている。



「さて、お前はどう動く? 蒼衣」



きっとお前なら『石田先生』を助けるために行動を起こすんだろ?

受信メールを開きながら俺は目の前に転がる倉林春を見下ろした。



「……で、そろそろ起きたらどうなんだ?」



狸寝入りしてることくらいバレバレなんだけどな。

軽く脇腹を蹴り上げると倉林は目を開けて俺を見上げる。拘束されてるくせに余裕を浮かべる顔が気に入らなくて眉間に皺を寄せた。



「こんなところで会うなんて奇遇だな。友達を脅かして楽しかったか? 月城広夢」



ただの高校生の俺は至って普通の学生生活を送っていた。勉強は良い成績をキープしてきたし、部活でもそれなりに結果を残してきた。

親友と呼べる人間がいて、素の俺を受け入れてくれる場所を作ってくれた。

大好きな親友との平和な日常。それをアンタたち麻取が、ぶち壊した。



「友達を脅かす? アンタたちが蒼衣を巻き込むからだろ!!」



沖田一輝が蒼衣に接触しなければ、薬を盗まれて父さんが死ぬことも、俺の日常が変わることもなかったのに……!



「明日の夜、蒼衣と引き換えにアンタを解放する。悪いがそれまでここで大人しくしててくれ」



何かを言っていた倉林を振り返ることなく、俺はその場を離れた。




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