解読不能

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煙草の吸い殻を見つけた後、普段通り午後の授業を受けて何事もなく放課後になった。

人が減り始めた教室に広夢がいないだけで、生物の授業をする倉林さんがいないだけで。

俺の目に映る世界は、モノクロ写真のように鮮やかさを失っていた。



「裕哉、帰ろう」



俺を送り届けたら、きっと衛藤さんは倉林さんを助けるために奔走するんだろう。なら早い方がいい。

手早く荷物を纏めて学校を出た。俺も衛藤さんも自然といつもより早足になる。

今日は梶さん、帰って来ないかもな……。いつ帰ってきてもいいようにメシは用意しとくけど。



「裕哉、気をつけてな」



俺には心配することしかできないけど。



「うん。ありがとう、蒼衣くん」



柔らかな表情で笑う衛藤さんに、不安で固まった顔が少しだけ緩んだ。

いつもより5分早く着き、マンションの前で衛藤さんの後ろ姿を見送った。












「さて、何を作ろうかなー」



部屋に戻り私服に着替えた後、キッチンで冷蔵庫を覗きながら夕飯のメニューを考える。

野菜が結構残ってるな……そういや最近、麺類と肉料理ばっかりだったかも。

メインは豚肉と水菜、ピーマン、人参、マイタケの豆板醤炒めに、野菜たっぷりのコンソメスープ。

それから、酢を使ったキュウリとトマト、しそのサラダ。

最近体重が増えたって梶さん言ってたし、これからは野菜多めのメニューに切り替えた方がいいかもな?



よし、頑張って作るぞ!!



そう気合いを入れた時。




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