解読不能

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ケータイが流行りのメロディーを発する。着信は広夢からだった。



「どーしたよ、広夢」

《蒼衣……今から会えるか?》

「何かあったのか?」



そう問うと、話したいことがある、と緊張感漂う声色で答えた。

時計を見て時間に余裕があることを確認してから、俺は待ち合わせの場所を聞いた。



「公園な。じゃあ今から行く」

《……また後でな》



ケータイを閉じてポケットに突っ込み、財布を掴んで俺は公園まで走った。

広夢の様子がおかしかったから心配だし、早く行って話を聞いてやりたかった。

信号待ちしてる時間さえ惜しい。青に変わったらまたすぐに走り出し、間もなく公園に着いた。



「広夢!」



広夢の顔は俯いていることと逆光のせいであまりよく見えない。けど、いつもの明るい広夢じゃないのは確かだった。

不安になった俺は目の前まで歩み寄り、広夢の顔を覗く。



「広夢?」

「……………………蒼衣」



俯いていた顔を上げ、見つめ合う。

困ったような、でも何かを決意したような真剣な顔を目にして何も言えなくなった。



「取り引きを、しようぜ」

「取り引き……?」

「8年前……ここで起こったことに関する全ての情報と、倉林春の命が取り引きの内容だ」

「え……」



8年前、ここで起こったこと……カズキ兄ちゃんの死。

何で広夢がそのことを知ってるんだ? それに何で倉林さんのことを……いや、それより。

倉林さんを連れ去ったのは、広夢なのか?




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