解読不能
□16
5ページ/5ページ
「どうしてだよっ!! 何でお前が、そんなことを……っ!」
「……蒼衣、答えを聞かせてくれ」
俺の知る情報を話せば、倉林さんの命が助かる。
1日中そわそわしていた衛藤さんや、焦っていた梶さんの様子が思い浮かんだ。
ごめん、比企さん。また約束破っちまうけど許してくれよな。
「俺の情報と引き換えに、倉林さんを助けてくれ」
「そう言ってくれると思ってた」
小さく笑みを溢した広夢はケータイを取り出し、電話をかけ始めた。
「俺だ。日が完全に落ちたら倉林を解放しろ」
夕暮れの赤が恐ろしく鮮やかで眩しくて、俺は固く目を閉じた。
「……出ない」
何度か蒼衣に電話をかけているが、電源が入っていないらしく繋がらなかった。
今日は遅くなりそうだから連絡を入れておこうと思ったんだがな……。
ケータイを睨む俺を見て比企が苦笑する。
「連絡取れないの?」
「あぁ。電源切ってるらしい」
「カイくんが事務所に来たってことはもう授業は終わってるし、家にいるはずだよね」
比企の声が少し鋭さを増した。
張り詰めた空気が流れるが、すぐにそれを打ち破るように俺のケータイが鳴った。電話ではなくメールだ。
20XX/5/XX/19:58
From:倉林春
Sub :無題
────────────
神崎蒼衣と引き換えに
倉林春を解放する
これは神崎の決断による
ものである
次の場所に倉林はいる
×××区×丁目××××
もう神崎に手を出すな
「蒼衣っ!!」
.