criminal
□FILE.2 Secret Garden
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「あら、待ちくたびれちゃったのよ。来るのが遅いから」
言いながら、吸っていた煙草を地面に落とすと足で火を踏み消した。
医者の不養生とは、まさに目の前の女性の為にある言葉だろう。
だがグラマーなその女史……レイジー・グラツィアは全く気にする様子はない。
そう、この悩ましい色気を醸し出す女医こそが、くだんの煌の主治医で。
1年前、共にデストリーから離反した共犯者だ。
眼鏡を外して胸ポケットへと直し、バレッタで纏めていた髪を無造作に外せば、茶褐色の髪が緩やかな曲線を描きながら揺れた。
その1つ1つの所作すら、どこか艶かしい。
「とりあえず、ここじゃ目立つわ」
―― 入りなさい
そうレイジーに促されるまま、院内へと足を踏み入れた。