LAST EXILE
□第一章(完結)
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マリアの言葉に、エイルとガルムは彼女に視線を向けた。
マリアは目を細める。その視線の先には彼女にとって唯一といっていい存在、愛してやまない宝がいる。
「ずっと、…ずっと寝たままで、夢の中にいれば幸せでしょうね」
マリアは眠るセスの頬を撫でた。
「夢の中だったら、あの人もいて、私も」
「――――やめますか?」
マリアの言葉をエイルが遮った。
マリアは苦笑すると首を横に振った。
「まさか。エイル、ガルム。あなた達には感謝しているわ」
マリアは再び視線をセスに向けた。セスの寝顔はとても安らかだった。
「感謝してもしきれない」
安らかに眠る愛しい存在。これから起きることを何も知らずに眠っている。
目が覚めたら、きっとこの美しい顔は歪むかもしれない。
涙を流し、絶望に悶えるのかもしれない。
そうさせる原因が自分の決断と行動にあると悟るマリアは、悲哀の表情を浮かべながら哀しげに微笑んだ。
細めた彼女の目から流れ落ちた涙が頬を濡らした。
「ごめんね」
マリアの口から謝罪の言葉がいくつももれた。
「ごめんね。ごめんね、セス」
愛する存在を悲しませることに、その原因が自分にあることに、マリアはひたすら謝った。
「お母さんを、許して。私は、どうしても」
――――“本物”になりたいの。