†song†

□車輪の歌
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大和は必死に自転車を漕いでいるが、スピードは落ち大きく揺れる。
その揺れが何とも心地良かった。

「もうちょっと、あと少し」

笑いながら言った。
あたしは乗ってるだけだから楽チン。
人事のようにはしゃぐ。

「お前っ! 自分は楽だからって簡単にいうなっ」

ふざけて笑い合う2人の声が響く。
朝早くの町はとても静かだ。
ふと笑い声がやむ。

「世界中に2人だけみたいだね」

大和が小さくこぼした。
同じことを考えていたようだ。
あたしは頷いて大和の背中に顔を埋めた。

坂を登り切った時、大和が自転車を止めた。
つられてあたしも顔を上げた。

あたしたちは同時に言葉をなくした。
迎えてくれた朝焼けが綺麗すぎて。

日が登るまでただ朝焼けを見ていたけれど、どちらともなく駅へと歩き出した。
駅につくとあたしは切符を買った。
大和は隣りの券売機で入場券を買い、ポケットにしまっている。
券売機で1番高い切符を買ったあたしと1番安い入場券を買った大和。
この差があたしたちの距離を示しているようで泣きたくなる。
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