†long†
□止まない雨
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降りしきる雨の中、目の前には鋭い爪に貫かれた女の後ろ姿。
その爪が抜かれると、女はゆっくりと崩れ墜ちていった。
遠くで雷鳴が響く。
少女は声を出すことも出来ず、ただその姿を見つめることしか出来なかった。
「……っっ!」
目を覚ました女は起き上がって額の汗を拭う。
「またあの夢か……」
ふと外を見ると激しい雨が降り、雷鳴が鳴っている。
まるで、あの時と同じ雨のよう……。
女の名前は弥生(やよい)。
彼女の住む里は、世の中に巣くう悪い魔物を退治することを生業としている。
そして、弥生も同じ仕事をしていた。
弥生は着替えると部屋を出た。
今日は仕事がある。
外に出ると先程の雨が嘘の様に止んでいる。
里の入口まで歩いた。
小高い丘の上にある里の回りには1つの門を残して塀に覆われている。
そして、そこには1人の男がいた。
「よぅ」
「……今日の仕事は?」
「麓の村からの依頼だ。森に魔物が出るそうだ」
「そう……」
男の名前は秋斗(あきと)。
弥生のパートナーである。