†song†

□青いベンチ
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青いベンチ

目の前に続く並木道。
ここを君と歩いたのを思い出す。
2人でよく座っていたこのベンチに1人で座り僕は君を思い出す。

昨日届いたクラス会の案内状が僕の記憶を呼び覚まし、この場所に引き寄せた。
青春を過ごしたこの街、君は卒業と同時に出て行ったけれど僕はここで暮らしている。

「あたし、卒業したらこの街を出る」

そういった藤咲愛桜(フジサキアイラ)の瞳には決意に満ちていた。
愛桜は1度決めたら揺らがない。
ずっと幼馴染みをしていた僕は知っている。

「陸は? 結局どうするの?」

「僕? 僕は……地元の大学に進学するよ」

「……そっか」

愛桜は目を伏せる。
長い睫毛が影をつくった。


そして、別れの日。
愛桜を見送るため、駅のホームに立つ。
まだ少し肌寒いが、うららかな日差し。
春が近付いている。
ホームから見える桜の木々が蕾をつけ、花を咲かせるタイミングを伺っているようだ。

「これからは寝坊したって起こしてあげられないんだからね」

愛桜が笑って言う。

「お前こそ大人しくしてろよ。僕だからお前のじゃじゃ馬に付き合えたんだからな」
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