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□なんの実験かと思った
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おかしい、何か朝からおかしいわ…!
そう思いながらハルキはホグワーツの長い廊下を一人黙々と歩いていた。その顔には驚愕と落胆の色がありありと浮かんでいて、その様子から何か悩んでいるのを感じる。
しばらくスタスタと無言で歩いて、そして立ち止まった。外を可笑しそうに笑いながら歩く学生たちが目に入る。はぁ、と態と大きく溜息をついた。
(どうして今日は誰にも会えないのかしら?)
誕生日なのに…、とハルキは寂しそうに呟いた。
別に特段祝ってほしい訳じゃない。ただ、まだ11歳の少女にとって、今日この日が何でもない1日でも特別に思えてしまうのだ。そんな日に限って、アキラからもアキラのお母さんからも、ましてや友人からも何も言われないし、しかも授業以外会えてすらいないのだ。
実は私のこと嫌いだったんじゃ、なんて不安になるのは当然である。
「…どうしたのかなぁ」
はぁ、とまた溜息をついて、ハルキは寮への道を歩き出した。
ーーー
「さて野郎共、準備はいいか?」
赤毛を携えた双子の片割れが、わざとらしく咳をして切り出した。
「あら?私もいるのよ?」
亜栗色の髪をした少女が嫌みったらしく返す。
「おっと、こりゃ失礼レディ」
もう一人の片割れが可笑しそうに肩を竦めた。
「おい!早くしないとハルキが帰ってくるぞ!」
双子と同じ赤色の少年が焦ったように言った。
「アキラが足止めしてくれるんでしょ?大丈夫だよ」
クシャクシャの黒髪の少年が余裕そうにつぶやいた。
「「今夜はいい悪戯日和だ!!」」
5人の影がひっそりと揺らめいた。
ーーーーー
『どうしてこんな大袈裟にするんだい?別に普通でいいじゃないか』
『普通だって?とんでもない!アキラ、君はわかってないな』
『失礼だな、わかってるよ』
『いーや!わかってない。今日と言う日がどれだけ大切なのか、もっと大きくしてもいいくらいだ!』
『それはハルキが困るよ』
『だから抑えたんじゃないか。いいかアキラ、今日は特別な日なんだ』
『そう!僕らの特別な子の特別な日は、超、超、超、特別な日なんだ!』
『『だから君にも協力してほしい!!』』
アキラは少し肌寒いホグワーツのグリフィンドール寮の前で一人佇み、先程のやりとりを思い出していた。周りの生徒はスリザリン生がそこにいることにギョッとするが、それがアキラだとわかると納得したように挨拶をする。
廊下に出て30分以上、アキラはこんなことを繰り返していた。
──『特別なんて丸く言わないで、正直に言ったらどうなんだい?』
その問いの先を思い出して、アキラは小さく笑った。あれで一月はからかえるな。
「…アキラ?」
「やあハルキ。待ってたよ」
やっと到着した我が幼なじみが、不思議そうに、怪訝そうに、けど少し嬉しそうに話しかけてくる。アキラはその笑みを悪どい物から純粋な物へと変えた。
口を開こうとするハルキの背を押して寮の扉を(先程から何度も合い言葉を聞いているので)開けると、爆発音と共に視界を鮮やかな光が踊った。
──『 、だよ』
先程照れたようにはにかんだ2人が、映画のワンシーンのようにチラついた。
──Happy birthday our little princess !
魔法界のクラッカーと、色とりどりの飾り付け、申し分ないほど豪華な食事、山になったプレゼントと、極めつけに笑顔で祝ってくれる友人たち。
ハルキは一瞬呆けた後に、それはもう大袈裟に喜んでみせた。
なんの実験かと思ったわ!
(ハルキの笑顔を写したように)
(2人が一番笑ってた。)
ーーーーー
遥ハピバ!(*´▽`*)
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