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□確かに恋だった
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「ハリー!!」
もう何度目になるかわからない叫び。クシャクシャの髪とエメラルドの瞳を持った、世界一勇気のあるその人の名を呼ぶ。向かう背中、驚くその人、悲鳴を上げる親友を後目に、呪文の飛び交う中を駆けた。
───今回も、守れた
緑の閃光が胸を貫く。エメラルドの瞳に涙の膜が張られるのを、どこか冷静な自分が見ていた。夢が覚めるような感覚。伸ばした手は握られることなく、
「
あな
た
を
、
」
愛 し て る
━━━━━
暖かい毛布の感覚。薄暗い見慣れた部屋。日の昇りかけた空は、不気味な朝焼けで。
「また、夏…」
地元じゃ味わえない涼しげな夏の日、私は××目の死を終えた。
「あなたは、英雄になるの…」
この言葉は届かない。彼は私と繋がってはいけない。彼は生き残った男の子で、例のあの人の宿敵で、グリフィンドールの英雄で、
「私の、すきなひと」
───だから生きて。
もう何度繰り返したろう暑い夏。そのたびにここが戦場になって、多くの学友が死んで、多くの敵を殺して、そして最後に私が死ぬ。
彼を生かして死ぬ。それが私が××回繰り返してきたこと。そしてその度、私と彼の時間はこの夏に帰ってくるのだ。そしてまた始まる。
───こんな無限ループが終わるとしたら、
───きっと彼が死ぬのだろう。
「フウカ?」
「おはようジニー、寝癖付いてるよ?」
え?なんて可愛らしく顔を真っ赤にして髪を撫でつける親友に苦笑いをこぼした。いつの間にか朝日は完全に昇っていた。
━━━━━
始まった××目の戦い。
いつものように舞台となったホグワーツ。いつものように死んでしまった友や先生、名も知らぬ闇の陣営。
「ハリー!!」
再び訪れるその時を待っていた。謀ったように飛び出す体。視界の先の逞しくなった背中。いつものように突き飛ばして死を待つ、私は今回も間違えなかった。だけど、
(なんで…?)
いつもなら驚愕と恐怖と悲壮と少しの憎悪、彼の瞳はそれだけを映し出すはずだ。そのアーモンド型の目を丸めて、私が手を伸ばすはずなのに。なのに、どうして…、
「 フウカ 」
ぎゅ、と優しく壊れ物を扱うかのように抱きすくめられる。なんで、どうして、そんな疑問符ばかりが脳内を飛び交った。
───ハリーは笑ったのだ。
笑って抱きしめて、でもこのままじゃ…っ
───緑の閃光が弾ける
「 フウカ、君を… 」
愛 し て る
大きな涙の粒が、ボロリと彼のシャツに落ちて───
確かに恋だった
(世界の平和より、)
(何より君が好きだった。)
朝焼けが不気味な空模様。日の昇りきらない薄暗い部屋で、1人の青年の陰が窓辺に寄る。
「今度も、君を守れた…」
そのエメラルドの目には、彼女とお揃いの雫が静かに頬を伝っていた。
***
カゲロウのパロです(`・ω・´)
一度やってみたかったんよ←
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