HPlong
□9と3/4番線から
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マグルの行き交う朝、キングスクロス駅9と3/4番線からホグワーツ行きの汽車が出る。
入学許可証に同封された切符を見て、よくまあマグル生まれが乗り遅れたりしないよなぁ、としみじみ思った。世の中純血でも魔法をわからない奴とかいるのに。
(ハルキまだかなー)
大荷物のカートを抱え、頭に猫を乗せているアキラは、正直言ってかなり目立っている。全く意に介さないが。
まだイギリスでは朝靄が出ていて、アキラは暇そうに足をぷらぷらさせて、ベンチに腰掛けていた。まだホグワーツ特急が出るには早い。
「やあ、また会ったね」
聞き覚えのある男の声に、アキラは弾かれたように上を向いた。
「本屋で会った…」
「まさかこんなに早くもう一度会えるとは思わなかったよ、ホームへの行き方がわからないのかい?」
「違います。友人をここで待ってるだけです。」
アキラが少し警戒しながら話すと、男は笑って敬語はなくていいよ、と隣に腰掛けた。彼はアキラの溢れんばかりの荷物を見て、懐かしいねと一言漏らした。
「ホグワーツはいいところだよ。学校は綺麗だし、授業も楽しいし、なにより掛け替えのない友ができる」
「…友」
「私も唯一無二の友を得た。彼らとは、闇の時代にバラバラになってしまったけれど…」
絶えず動く人の波を見ながら、男はどこか悲しそうに呟いた。アキラはその横顔から少しの間目をそらせなかった。
泣いている?違う涙は流していない。けど、でも、
(泣くかと思った)
男の頬に、大粒の涙を見た気がした。
「………バラバラになろうがなるまいが、友達なんでしょ」
「え、」
正直に言えば、見ていられなかった。迷子のような、寂しいような、悲しいような、憎いような、色々なものが入り混じった目をするその男を、これ以上見ていられなかったのだ。
知ったこっちゃない他人だ、警戒すべき大人だ、そんな言い訳をする頭の中を無視して、アキラの口は本人の預かり知らぬところで勝手に言葉を紡いでいた。
「なら一方通行でもなんでも、自分勝手に自己満足で友達だ、って言い張ってればいいんだよ」
「会えないくらい、大したことない。あなたが友達になった彼らってのは、バラバラになったら友情が全部消えちゃうような、そんな人達じゃないんでしょ?」
「もっと我が儘に想いなよ。」
「友達ってのはそんな簡単に終わらない、でしょ?」
そこまで言って、ふと我に返った。隣を見ればポカンとした表情でこちらを見ている男。やってしまった…!!アキラはそう思わざるを得なかった。
「えと、だから自分が言いたいのは、友達をこう、あー、///」
「………ふふ、あはははははっ!」
「な、なんだよっ、笑うなよ!!」
「だ、だって、君があまりにも友人と似てて…ふふふっ」
「こ、このぉ///」
恥ずかしさでいっぱいで、途端に顔が赤くなる。ほとんど八つ当たり気味に男の左腕を叩いた。痛い痛い、と言うけれど爆笑を止めないあたり、あまり痛くないのだろう。
しばらく笑い続けた男は目尻の涙を拭ってアキラを見た。アキラはと言えばムスーンと頬を膨らまして男からそっぽを向いている。男は微笑みながらアキラの頭を撫でた。
「ありがとう」
「…なんのことですか」
「おや?拗ねてしまった」
「拗ねてない!!」
子供扱いがアキラの不機嫌に拍車をかけていた。男はそれに気付いてるようでニンマリと笑う。
「私ももう少し我が儘になろうかな」
「は?どういう…」
「アキラ、私と友達になりませんか?」
差し出された手。男の人らしくゴツゴツした骨ばったそれは、アキラの手を簡単に包み込めそうだ。
アキラは少しポカンとすると直ぐにニヒルに笑った。
「友達なら名前くらい名乗りません?」
今度は男がポカンとする番だった。それも直ぐに笑顔に変わる。
「リーマス、リーマス・ルーピンだよ」
「よろしくリーマス!」
握手は交わされた。