立海short

□風が抜けていく
1ページ/1ページ


「蓮二!」

「あぁ、陽か。」

「あのね…「おい、蓮二!」



が抜けていく



「すまない、陽、弦一郎の所へいかなければ…」

「ぁ、うん…いいよ。」

「話は後で聞こう。」

やや急ぎ足で真田の元へと向かう蓮二を見送った。

今日は蓮二の誕生日。
まだ、おめでとう の一言すら言えていない。

「はぁ…」

ため息をつく。

プレゼントもたいした物を用意できなかったけど
蓮二なら、気持ちが大事だ。
とかいってわかってくれそうだし。
なんとかなるのかな、なんて。

そんな考えを頭に巡らせてる所へ
蓮二が戻ってきた。

「すまない、なんの用だ?」

「ぇー、その、」

後ろ手にプレゼントの入った袋を握る。

「誕生日おめでとう、蓮二。」
袋を突き出す。

「ぁ、あぁ…覚えてくれてたんだな、ありがとう。」

そのやや驚いた言葉とは裏腹に
悪戯な笑みを見せる。

「ふっ…」

「なによ…」

「あぁ…陽が俺に…」

でた、蓮二のデータ。
最近わかるんだ、なにが言いたいか。

…今回は、

(陽が俺に好きだという確率100パーセント)

「ぁ、それ絶対100パーセント。好きだよ、蓮二が。」

催促されて、じゃなくて
自分の気持ちで言いたかった。

わかって当たり前かのように蓮二は言った。

「はは…そうだな、俺もだ。」
「あれ、ちゃんと言ってくれないの?」

もの欲しそうな顔で見る


「陽の反応にはいつも驚かされるな…
だから好きなんだ。」


陽は得意げな顔を見せる。

「ぁ、プレゼント開けないの?」

「いいのか?」

「もちろん!」

陽の言葉を合図に袋を丁寧に開ける。
中にはきちんとケースに入った5個のテニスボールが。

「勿体なくて使えないな…」

「いいの、蓮二がそのボールで練習してるとこ、見たいから。」

「そうか…ありがたく使わせてもらおう。」

そういって1つだしポケットへ入れる。

「ぁ、」

「どうした?」

「ぇ、今使うの?」

「あぁ、今使うつもりだ。」

「今すぐに使うの?」

「あぁ、今すぐに使うつもりだ」

「…マジカ。」

「…?」


蓮二がポケットに入れたボール。
それには小さくハートの落書きがしてあった。


偶然引き当てるなんて。
5個の内1個しかないそれを

「使うんですか…。」

「…。」

無言で蓮二はボールを取り出すと
満足そうな顔で戻した。
そしてその満足そうな顔で
陽の頭をわしゃわしゃした。

「…そういうことか。」

「…そういうことデス。」

「それじゃ練習に戻るな、」

「頑張ってね!」

「あぁ、このボールなら頑張れそうだ。」


笑って見せた。



H23.06.04

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ