四天short

□紡いだ糸
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もし、この世の中に“赤い糸”が存在するならば…


いだ糸

もし、なんてものはない。
見えないものは信じない

周りの女の子は
赤い糸がー。
好きな人がー。
そんなので盛り上がってる。

ただ、それに流されてみただけ。

つまり気分なのだ。


『もし赤い糸が存在するのなら、
辿ればまだ見ぬ君に会えるのでしょうか。』



感じるがままに足を進める。
他の人には見えぬその赤い糸を信じて。


「陽!」

「ぁ、白石くん」

「何しとん?」

「あぁ、ちょっと探しもの。」

……この人じゃない。
ほら左手、なにもついてない。

「んー、見つかるとええな、」

本当に見つかるだろうか
どうせ最初から
運命の人など存在しないのだ。
わかりきったことだったじゃないか。


『さよなら、運命の人』


おもむろにハサミを取り出し自分にしか見えぬその糸を――。

切った。


虚しくハラリと糸が落ちる。
当然、音などしない。

またフラフラと歩き出す

「うわ!?」

「光くん?!」

私としたことがぶつかってしまった。

「ご、ごめん…。」

「いや、ええよ、」

「…誰か探してるの?」

今は部活中だから
本来はコート上にいる時間だ。

「いや、ちゃうんや。
何や急に左手が痛くなったんっスわ。
痛めてもうたんかな、」

どうやら保健室に向かうらしい。

はっとして財前の左手に目を落とす。

「あ…」


彼の左手の薬指に切れた赤い糸。

「ねぇ光くん」

「何や?」

「赤い糸って信じる?」

「…あぁ」

「そう」

「光くんが信じるなら私も信じる。」


切れた2本の赤い糸を丁寧に結び直す。

「陽何やってん?」

「私たちの赤い糸、結んでるの」

「陽…?」

「ねぇ、見えてるんでしょう?本当は」

見えてる訳がない。
でも、なんでこんな質問をしたのかも
私にはわからない。

「…!」

少し驚いたが笑って言った。


「あたり前っスわ!」

「ぇ…?」

くだらない、と笑われるかと思った。

「見えてるモンが全部じゃないって事っスわ!」

財前に抱きしめられる。


丁寧に結ばれた赤い糸
切れる前より丈夫になった。
この先、絡まってしまうことはあっても
ほどけてしまうことはないだろう。





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