四天short

□無限大に君が好き
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お天気のいい昼下がり。わたしがいる窓辺にはお日様の光。本棚と本棚の間にある小さなスペースに椅子を置いて、時々やってくるスズメを見ては給食の残りパンをあげる。そんな無限ループが、わたしは大好きだった。


「なあなあ‼」
「!?!?は、はいぃぃいッ‼」


突然の声にビックリして思わず大声を出す。窓辺に止まっていた鳥は飛び去ってしまった。


「そんなに驚かんでもいいやん!」
「ご、ごめんなさい!人来ると思わんかったから…」
「?そうなんか?ワイ、遠山金太郎言うねん!よろしゅう!」
「う、うん!わたしは##NAME2##陽って言うんよ」


突然の訪問者改、遠山くんは明るい印象を持った子だ。同い年な筈なのに子供っぽいのはその所為かな?


「なあ陽、図書室のセンセ知らん?ワイ、そのセンセに用事あるんや!」
「あ、司書の先生やったら主張ゆうてたよ。夕方には帰って来るけ、要件やったら伝えようか?」
「ホンマに?!じゃあワイがここに来たって伝えとって!」
「うん!それだけでいいん?」
「じゅーぶんや!ほな、また来るわ!」


遠山くんはそれだけ言うと風のように去ってしまった。夕方になって司書の先生に要件を伝えて、その日はそれっきり遠山くんに会うことは無かった。



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次の日もその次の日も、遠山くん改きんちゃんは図書室に来た。その度にたわいも無い話をして、偶に夢中になってきんちゃんの先輩が迎えに来てる。最近の日常だ。


「きんちゃんの先輩さん、偶に来はるけど、きんちゃん何部なん?」
「テニス部や!ワイ強いでぇ!」
「わぁ!ホントに?わたし、スポーツとかせんから得意やなか。やけ強いなんて、きんちゃん凄いんね!」


素直にそう褒めると、きんちゃんは暫くポカンとして、照れ臭そうに笑った。


「陽は何かやっとらんのん?」
「わ、わたし?!わたしは何もやっとらんよ。秋に転校して来たばっかやし、やけ友達もいない…」
「前の学校に友達いんかったんか?」
「前は田舎やけ、子供少ないんよ。10人ちょっとしかおらんし、同い年は1人もいんかった」


そう。山の麓の小さな村は住人も少なくて、わたしはいつもお母さんと一緒に田畑を耕してた。物心ついたころには父親もいなかったし、お母さんは優しかったけど毎日一人だった。

そう言うときんちゃんは興味深々に聞いてたので、わたしは思わず笑ってしまった。横から聞こえるきんちゃんの文句。でもきんちゃんの顔は嬉しそうだった。


「なら、陽の一番の友達はワイやな!」


すごく嬉しそうに言ってのけた君。わたしは暫く呆気に取られてたけど直ぐにまた嬉しくなった。


「そうやね。わたしの一番の友達は、きんちゃんやね」
「おん!ワイ、陽のこと大好きや!」
「わたしはきんちゃんの10倍だ〜い好き!」
「ならワイは100倍や!」


どんどん増えるゼロの数。結局どれくらい好きなのか、





無限大に君が好き
(なんや金ちゃん、最近遅いと思ったら…)
(やだ良いやないの〜)
(青春やな…)
(……先輩達何してるんすか)





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