刀剣乱舞

□着任いたします
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黒い雲、漂う悪臭、淀んだ空気、ここはどこか。そんなのわかりきっている。
息遣いが聞こえる。怯えて震えて、カチカチなる歯の間から漏れそうな泣き声が。それを無理矢理手で押さえて、くぐもった様な泣き声が聞こえる。
ここは、どこか。今更、答えなど誰も返さない。

『審神者コードxxxxxx、認証しました。ようこそ本丸へ。』

思いなどない、情けなどない。無機質な声は私をここに繋ぎ止める。
背負った荷物と肩に掛かる武器が、嫌味ったらしくカチャカチャ鳴って、憂鬱な程重い。
足を一歩踏み出す。押し出すような風が吹く。暗く湿った、心地悪い風が。
ここはどこか。こんなよごれた、くさい、けがれきった、

「今日から貴方の本丸です。審神者様」

小さな管狐が、そう尻尾を振った。そんなことは知っている。
ここはどこか。今日から審神者が代わる本丸。私の本丸。

「引き継ぎではありますが、審神者様にはこの本丸で通常業務を行ってもらいます。」
「…了解」
「ノルマは他の本丸と変わりませんが、資源については落ち着くまで政府から支給されます。数量については申し訳有りませんがこんのすけには…」
「後ほど員数点検を行うので、問題なし。続きを。」
「前任の方が使ったままですので、その、あるものは全て審神者様に任せるとのことです。」
「ならば管理は私の勝手で。見取り図や地域図は入手済みなので。」
「それから、刀剣の鍛刀部屋は四部屋ありまして、」
「鍛刀は日に四回も行わない、内二部屋は解体。後に刀剣男子の部屋割りに組み込む。」
「えっ、は、はい!了解しました」
「刀剣男士の人数は報告と変更が?」
「はい、その、前任の方が引き払われる際、腹いせにと短刀が2人ほど…」
「…後ほどその短刀の報告をいただきたい」
「政府から今日中に届く予定です。」
「了解。他には?」
「…私めからお願いするのは申し訳ないのですが、前任の方は刀剣の手入れをあまり行わない方でして、」
「…」
「訳がありまして、その、この本丸の一期一振が弟君の手入れを、と前任の目を盗んで…、見つかってしまい、手入れ中の短刀ごと燃やしてしまったので、手入れ部屋がないのです」
「…それは報告されてない。政府に問い合わせるように。」
「はい、それは勿論…。ですが、その前にどうか、どうか手入れ部屋を設置して頂きたいのです!!」
「…」
「お願いします審神者様!このままでは刀剣男士の方々があまりにも…!!」
「…それはできない」
「!!?何故です?!!!」
「報告を受けていないから。私は、ブラック本丸再発防止の為、政府から与えられた管轄内でしか勝手はできない。」
「そんな…」
「それに手入れ部屋は必要ない」
「そんな!?刀剣男士の方々は重傷で、手入れをしなければ折れてしまいます!!!」
「いらない」
「審神者様っ!!!」

管狐を振り切って、庭に足を踏み入れた。




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