刀剣乱舞

□着任いたします
2ページ/3ページ






ここは、どこか。

ここが私の本丸だと言うなら、こんな穢れきった痛々しい本丸なら、いっそ全て無くして解かして、消してしまった方がしあわせなんじゃないか。綺麗なまま終われたんじゃないか。

(かわいそう)

襖からこちらを睨んで、刺々しい殺気を送って、新たな脅威に震えて、漏れそうな泣き声を押し殺して、
刀として、神として、あるべき姿を失った。

(本当に、かわいそう)

庭の一等大きな樹が、嘗ては咲き誇ってたであろう桜の樹が、見るも無残に死にかけている。
触れた幹は乾き、葉は萎れ、枝は力なく垂れ下がり、黒く暗く、
清庭とは程遠いそれに、成り下がっている。

「お前も、ずいぶん、かわいそう」
「審神者様…?」

ボロボロの手足、黒ずんだ毛並み、血の滲む頬。
管狐とは名ばかりの、野良の畜生のように落魄れて。

前の審神者の、汚らしい気配が、臭い邪気が、穢れた霊力が、未だに彼等を堕とし続けてる

(なんて、かわいそうなほどあさましいひと)

―――目を閉じた。





.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ