黒子のバスケ

□記憶
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「ねえ涼太、約束しよう。オレは絶対におまえを探し出す。だから・・・泣くな。おまえには笑ってほしいんだ」


ここは・・・夢?
俺の前にいるのは・・・誰?
赤い髪・・・きれい


「でも、オレのせいで――は目が・・・」


え?なんて言った?


「大丈夫だ。今から治しにいく。忘れていてもかまわない。でも、待っていてくれないか?オレの目が治るまで・・・」

「・・・うん。待ってるっス」

「やっと笑ったな。それじゃあ」


なにこれ・・・
夢?記憶?
ねえ、あんたの名前・・・
あんたの顔・・・見せてよ!!


オレは赤い髪の男に手を伸ばした。



しかし、その手は何もつかむことはなかった。

そのまま、目が覚めていた。

やっぱり、夢だった・・・?

ふと鏡を見ると、自分の目から涙が流れていた。

覚えているのは赤い髪の男、そして・・・目を怪我したこと・・・



もう一度寝る気にもなれず、オレは少し早いが部活に行くことにした。














部室には鍵がかかっていると思い、ドアノブをまわしていると、鍵は開いていて、すんなり入ることが出来た。
誰があけたのかと考えていたら、前から声がした。


「黄瀬か。早いな」

「あ・・・赤司っち・・・」


部室にいたのはキャプテンである赤司だった。


「赤司っちも早いっスね」

「いつもこのくらいだが?」

「そうだったんスか?」


オレは荷物をロッカーに置き、着替えようとしたら強い視線が感じ取れた。


「・・・あの・・・赤司っち・・・着替えにくいんスけど・・・」

「ああ、すまない。ただ、今日はやけに早いなと思ってな」


赤司っちにはお見通しっスか?
絶対に赤司っちには嘘がつけないっスね・・・

「じつは・・・夢を見たんスよ」

「夢?」

「はいっス。小さいころなんスかね?赤い髪の男の子と話をしてたっス。それで、目を怪我してて?遠くに行くって。
それでオレはずっと泣いてた。オレのせいで目を怪我した?って・・・それで、また会うって、探しに行くってその男の子が言ってくれて、
でも、名前も聞き取れなかったし、顔もよく見れなかった・・・」


赤司っちはオレの話を静かに聞いてくれた。
オレが話し終えると、赤司っちはオレのほうに近づいてきた。


「え?赤司っち?」

「・・・おまえは・・・」


赤司っちの顔は見えなかった。
けど・・・なぜか、懐かしく感じてしまう・・・


「やっと、会えたね、涼太・・・」


ああ・・・そうだ。
思い出した・・・
オレは約束をした。
また会おうと・・・
その男が目の前に・・・


「・・・っせ、征っ!!」


オレがずっと会いたかった人・・・


「ずっと・・・会いたかったっスよぉ」

「オレもだよ、涼太」


涙が止まらないオレに、征は涙をぬぐってくれた。
それでも、涙は止まらない。
だって、ずっと・・・ずっと待ち望んでいた人が目の前にいるから・・・


「そんなに泣くな。ずっとおまえのそばにいただろ?おまえが忘れていただけだがな」

「だってぇ・・・征が・・・征が悪いんスよ!!」

「まったく・・・おまえはいつも泣き虫なんだから」

「ふえ?」


分けがわからなかった。
だって、征がオレに、オレに・・・キスをしてきたから!!


「ちょっ・・・何するんスか!」

「こうでもしないとおまえが泣き止まないだろ」

「だからって・・・」

「いやだったか?」

「っ・・・いやじゃない・・・」

「ならいいだろ」


征はずるい・・・
昔からずるすぎる。
そんな顔を見せられたら何もいえないっスよ!


「さて、おまえにはいろいろ聞きたいことがあるが、今日早めておこうか。だが・・・覚悟しておけ」

「・・・はいっス・・・」


結局あの夢は今日のためにあったのだろう。
何故オレが征の約束を覚えていなかったか。
それは、考えるだけで寂しくなるから・・・
だから忘れればさびしくなくなると思っていた。
まさか、ずっといたとは思っていなかった。
うれしいような、悲しいような・・・
それでも、今はすごく幸せだ。

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