黒子のバスケ

□これが出会い
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椿組
それは今までボスが殺されることのなかった組の中で1を誇るマフィアだ。
今回はそのボスを殺ってほしいとの仕事が来た。


「出来るな涼太。1ヶ月で殺ってこい」

「ラジャーっス」


黄瀬は山組であるボスに言われ、椿組に1ヶ月でスパイに入ることとなった。










そのころ椿では、その情報をすでに持っていた。


「赤司君。新しい部下が入ってくるみたいですよ」


黒子は持っていた資料を赤司に渡した。


「へぇ・・・黄瀬涼太か・・・」

「どうします?」

「しばらく野放しにしておけ」

「わかりました」


そう言うと黒子は部屋から出て行った。
赤司は黒子からもらった資料をもう一度見ていた。




「少しは楽しませてくれよ。涼太・・・」






***









黄瀬が椿に来ると、ボスである赤司が座っており、その両隣に部下5人が立っていた。


「今日からお世話になるっス。黄瀬涼太っス」


普段あまり見せない無邪気な笑顔を見せながら、自己紹介をした。
こうしておけば、警戒されないからだ。


「よろしく、黄瀬。わからないことはテツヤに聞け」


赤司がそう言うと黒子が黄瀬の目の前まで来た。


「黒子テツヤです。よろしくお願いします」


黒子が左手を出してきたので、黄瀬も左手を出すことにした。


「よろしくっス」


これにより黄瀬の人生が大きく変わることを誰も知ることはなかった。
















それから1週間がたち、黄瀬は椿になじんでいた。


「黄瀬ちん、そのお菓子ちょーだい?」

「むー・・・1個だけっスよ?」

「わーい。ありがとー」

「きーちゃん。私のひとつあげるよ」

「ありがと、桃っち!」

「黄瀬ぇ、それくれよ」

「ちょっ・・・青峰っち!?」

「まったく・・・あいつにかかわるとろくなことがないのだよ」

「緑間っち・・・」

「そうですよ。青峰君のことなんて空気を思えばいいんです」

「黒子っち・・・」

「おい、空気ってテツのこ「うるさいです」


こんな光景を黄瀬は楽しそうに眺めていた。
今までずっと、こんな楽しくしたことはなかったから・・・


「楽しそうでいいっスね。俺も楽しみたかったっス・・・」

「何を言っているんですか黄瀬君」

「え?」

「あなたは今、ここにいるんですよ」

「あ・・・」


黒子に言われ、自分が何を言ったのかわかってしまった。
黄瀬はとんでもないミスをしてしまったのだ。
今すぐ訂正しようとしたが、また何か言われるかもしれないのでそのまま続けることにした。
その後、黒子はボスに呼ばれているといってしまったので、5人で話をすることにした。






















そのころ黒子は赤司がいる仕事場に足を運んでいた。
静かにドアをノックすると赤司から「入れ」と一言きた。
黒子は静かにドアを開けるとそこには赤司がいすにすわり、ひじを机の上に置き手の上にあごを乗せ笑っていた。
その顔はもうわかっているといっているもんだ。


「赤司君。その顔は怖いですよ」

「ああ。でもテツヤが来たってことは何かあったんだろ?」


先ほどと変わらぬ顔で黒子を見ている。
黒子はため息をつくとあきれたように話し出した。


「黄瀬君の化けの皮、だいぶ剥がれてきましたよ」


その言葉を聞き、赤司は立ち上がった。


「そうか。ようやくだな」

「まだ1週間ですが・・・」

「もう1週間だ。涼太もいつまでここにいられるかわからないからな」

「はぁ・・・ところで赤司君。どちらにいかれるんですか?」


仕事以外あまり部屋から出ようとしない彼が出ようとして黒子が声をかけた。


「涼太のところだよ」


赤司は普段あまり見せない良い笑顔を浮かべていた。






ああ・・・黄瀬君。君はどちらを選ぶんでしょう・・・



















おかしい。


予定がものすごく狂ってる。
今週中に終わらせるつもりだったのに・・・
やっぱりはじめから気づいていたんスかね。
初めて会ったときからおかしいと思っていた。
全部お見通しだとでも言ってるようだったっスね。

でも、ひとつおかしい。
あの人といるとすごく安心する気がする・・・

“これ”は何?

“これ”のせいで仕事が出来ない。

“これ”さえなければ・・・

そうだ・・・“これ”を捨てればいい。



そうすればナニモ・・・



















赤司は今、黄瀬の部屋の前にいる。
ボスということもあり、出入りは自由だから赤司はためらいもなくドアを開けた。
が、静かにドアを開けたせいか黄瀬はまったく気づいていなかった。


「涼太」


赤司が名前を呼ぶと黄瀬はビクッと肩を震わせ、赤司のほうを見た。


「ボス・・・」

「だめだろ涼太。人の気配をしっかりとらないと・・・」

「いや・・・ボスっスから・・・」


ムリっスよと言いながら黄瀬は苦笑いをしていた。


「涼太」


赤司はコツコツと音を立てながら黄瀬に近づいていく。
黄瀬は手に力をこめた。
赤司が黄瀬の前まで来た。
と同時に、黄瀬は手に持っていたナイフを振り上げた。
下ろそうとしたが、赤司の一言でその手は止められた。


「殺してもかまわない」

「・・・知ってたんスね」

「ボクが知らないはずないだろ?」

「・・・そうっスね」


そう言いながらも黄瀬はナイフを上げたままだ。


「殺してもかまわない。だが・・・」




黄瀬はナイフを振り下ろした・・・






しかしそれは赤司に当たることはなく、床に落ちてしまった。
なぜなら赤司が黄瀬をベットに押し倒したからだ。
一瞬のことで何なのかわからない黄瀬だったが、赤司はそんな黄瀬の頬をなでた。










「泣くのはやめろ」








「え?」









赤司に言われ、ようやく自分が泣いていることに気づいた。


「あれ?オレなんで・・・?」


止めようにも涙はポロポロでてくる。
袖で目をゴシゴシこすっていたが、その手は赤司によって止められた。


「そんなにこすったら目が腫れるぞ?」

「でも・・・なんでとまらないんスか?」

「・・・涼太、ボクにすべて話してごらん?怒ったりしないから」


しばらく黙っていたが、赤司の顔を見ると引き下がる気はないのがわかったのか、ポツポツと話し出した。



「昔、オレは・・・親に捨てられたんっス・・・――――――――



もういつのころの話なのか覚えてないっスけど・・・
その後、うちのボス・・・山組のボスに拾われたんっス。
それから毎日オレを抱いて・・・
仕事のやり方も教わって・・・
たくさんの人をヤってきた。
人をヤるのに何も感じなかった。



でも・・・あんたに会ってからのオレはおかしくなった。
ボスに育てられたオレじゃなくなっている。
本当はアンタをすぐ殺すつもりだったんスよ?

でも・・・できなかった。
オレは何かに邪魔されて殺せなかった。
今だって・・・
でもようやく何が邪魔したのかわかった気がするっス・・・」



そこで黄瀬が話すのをやめたので、赤司が問おうとしたが、その言葉は黄瀬の言葉でとめられた。











「オレはいつの間にかアンタを好きになってたんスね・・・」







その顔は泣きながらも笑顔を見せていた。
赤司はそんな黄瀬がほしいと頭の中で思っていた。



「もう・・・何も言うことはないっスよ。あんたの好きなように殺すなり・・・「涼太」


黄瀬が話していたところを赤司が割り込んできた。


「お前はボクの好きにしていいんだな?」

「え?はいっス」

「じゃあ・・・






椿においで」


「え?」


黄瀬は赤司の言っている意味がわからずポカンとしている。
それを無視するかのように赤司はそのまま話し出した。


「自分のものを手元に置かないのはおかしいだろ?
涼太はもうボクのものだ。だれにも渡すつもりはないよ。
たとえ、涼太が育てた山組でも・・・」


そういいながら赤司は黄瀬の髪にキスを落とした。


「でも・・・あんたはそれでいいんスか?」

「なにがだ?ボクはボクのやり方でお前を手に入れるだけだ」


いまいち赤司の言っていることがわからない。


「ボクはね涼太。お前のことは好きかどうかはわからない。だが、涼太がほしいとは思ったよ」

「・・・」

「だから山組ではなく椿組においで」


赤司から右手を出してきた。
しばらくためらったものの、黄瀬はその手をしっかりつかんだ。


「はいっス!」








その後、椿組が山組をつぶし、黄瀬は正式に椿組となった。
また、彼らの関係も変わっていった。


「黒子っちー」

「黄瀬君。どうしたんですか?」

「赤司っちがねー」

「そうですか」

「まだ何も言ってないっスよ!」

「大体言いたいことはわかります。あ、赤司君ですよ」

「え?赤司っち?ほんとだー。じゃーね、黒子っち」


そう言うと黄瀬は赤司のほうに走り出した。




「まったく・・・困ったものです」








「赤司っちーー」

「涼太か。どうした?」

「今日ね、抱かれず殺せたっスよ!」

「そうか」


そういいながら赤司は黄瀬の頭を軽くなでた。
その顔は今までになくとても穏やかに笑っていた。


「えへへー」

「涼太。呼んで?」

「うぅ・・・」

「嫌?」

「・・・・・・・・・征十郎さん・・・」

「よく出来ました」


そう言うとまた赤司は黄瀬の頭をなでた。




今日も椿組は平和です。


えんど

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