黒子のバスケ

□あなたがいい
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桜が満開になっていく中、オレは布団の中でぼーっとしていた。






お前は黄瀬家の恥だ!

この屋敷から出ていけ!







たくさんの悪口を聞かされた。

まだその頃は、泣きべそかいてばかりだった。

そしてオレを広い屋敷に閉じ込めた。

あの時は本当に泣いてばかりだった。




そんなある日、一人の青年に出会った。

すごく真っ赤な髪に、燃えるような目。

オレは泣き止んでその青年を見ていた。




「やあ、始めましてだね」




急に話しかけられてビックリしてしまった。

どのくらい経ったのかわからなかったけど、青年はオレをずっと待っていた。

オレは青年に返事をした。




「はじめ・・・まして?」




そういうと青年は少し微笑んでオレに近づいた。




「会うことができて嬉しいよ」




「え?」




青年の言ってることはよくわからなかった。

だってオレは誰にも求められていなかったから。




「誰っスか?」




「ああ、ボクは赤司だ」




「あかし・・・」




聞いたこともない苗字だ。

そう思ったのもほんの少しで忘れてしまう。

オレも名を出そうと口を開こうとしたが、赤司により止められてしまった。




「お前は黄瀬家の者だろう?」




オレは目を見開いていた。




「どうして・・・」




「簡単だ。黄瀬家の者は髪が黄色だと聞いている」




確かに、黄瀬家は有名だ。

人間にも妖怪にも・・・







昔から黄瀬家には妖怪に恐れられている。

なぜなら、祓う力が強いからと教えてもらった。

しかし、今の黄瀬には妖怪を祓う力が無い。

見えてはいるが、気を察知することが出来ず、祓うことも出来ない。




「確かにオレは黄瀬家の者っス。でも・・・オレは何もわからないんス。あんたが人間なのか妖怪なのかも」




落ちこぼれっスね。

そう続けようよ思ったが、それは赤司により止められてしまった。




「じゃあボクはどちらだと思う?」




「え?」




それは唐突過ぎる・・・

今のオレには本当にわからない。

人間?妖怪?




「・・・わからないっス」




そういうしかなかった。

オレは目を伏せていた。

赤司って人がどんな顔をしているのか、何を思っているのかもわからない。

そう考えたのはほんの一瞬で、オレは顔をあげられた。

赤色が目に痛い。




「本当に?」




オレは驚いた。

だって、赤司って人の目が光っているからだ。




「・・・よう・・・かい?」




「正解だ。解るじゃないか」




「それは・・・あんたが目を光らせたからだろ」




「・・・確かにボクはそうした。だが、ほんの少しだけだ」




オレはわけがわからなかった。

首を傾げていると赤司は理解したのか、続きを話した。




「妖怪は人間に化けることが出来る輩もいる。まあ普通は見分けがつかないだろう。だが、妖怪は化けているんだ。必ず隙が出来る。
それが目を光らせることだ。これも普通の人間はわからないだろう。だが、お前はわかった。何故だかわかるか」




「・・・黄瀬家の血が流れているから・・・?」




「そうだ。だから、お前は無能ではない」




どうして・・・

そこまで言うんスか・・・

オレは何も言えなかった。

赤司はオレの頭を撫でてくれる。

やめてよ・・・

そこまでされたら・・・

オレは・・・

あんたを求めてしまう。




「求めてくれても構わないよ」




「・・・え?」




もしかして・・・




オレの心読んだんスか!?







「すまない。どうも制御ができなくてな」




「・・・いや・・・いいっスよ」




そこでオレは考えた。

読まれないように。




「ねえ赤司。オレと契約しないっスか?」




赤司は驚いていた。

そりゃあ唐突過ぎるっスからね。

さて、あんたの意見は?




「・・・全く。昔からお前は無茶なことばかりだな」




「えへへ。でも、赤司っちはこっちの方がいいんスよね?」




「そうだな」




そう。

オレは昔・・・前世でも赤司っちに出会っている。

思い出したのはさっきだが・・・

赤司という名もオレが考えた。




「それで、返事はどうなんスか?」




「・・・いいだろう」




「りょーかい」










今思えば、すごい無理やりだったと思う。

それからオレは力を維持できるようになっていった。
赤司っちもオレと契約したことで、本来の力の制御ができるようになった。

それでも・・・




「涼太?」




「んー?」




「早く起きろ」




「ふぁーい」




オレには赤司っちがいないとダメなんスよ。




「征」




オレは本当の名を呼んだ。

すると赤司っちは困ったような顔をしてこっちを向いた。

それでもすぐに整った顔でこちらを見ている。




「どうした、涼太。かまって欲しいのか?」




「・・・うん」



「まったく・・・仕方がないな」



前もそうだった。

オレには優しくしてくれる。

こんな日がいつまでも続くといいな・・・









えんど

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