黒子のバスケ
□黒コミュニティー
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3P 始まり
黒子っちはすこしおかしい。
いや。
おかしいというわけではない。
ただ、二次元が好きってだけであっておかしいわけではない。
それでも・・・
決め手は今日の昼休みだ。
「黄瀬君。ボカロというものを知っていますか?」
「あー知ってるっスよ。オレもあの曲が結構好きなんスよ!」
「それなら話が早いです」
オレはその時黒子っちが何を話してくるのかさっぱりわからなかった。
「一緒に動画を作りましょう!!」
「・・・え?」
初めは黒子っちの頭がおかしくなったのかと思ってしまった。
そんなオレは至って普通だ。
動画を作ると言ったら曲から作らなければならないのか。
そう黒子っちに問いかけたところ、そうではないらしい。
「曲を作るわけではありません。踊るんです」
「踊る・・・スか?」
「そうです。黄瀬君もクロクロ動画を見ているならわかると思いますが、ボカロには自由に踊りを投稿したり、歌を投稿することができます」
オレは首を縦に振った。
黒子っちはそのまま話を進める。
「僕は思ったんです。君みたいな運動能力がある人なら軽々できると。ちなみに赤司君には許可を得ています。もしよければお二人でやってみませんか?」
ん?
赤司っち?
今そのような単語が聞こえたような・・・
「黒子っち。赤司っちに許可をとったんスか?」
「もちろんです。赤司君ならこういうことについては手伝ってくれますから」
赤司っちが協力しているなら、オレは別にというかやらないという選択肢がない気がするっス。
「いいっスよー。一応社長に許可とらないといけないんスけど・・・」
「大丈夫です。赤司君がもう許可を取りました」
「早いっスね!?」
こうしてオレは黒子っちの動画のために部活並に頑張らなくてはならなくなった。
**
詳しくは部活が終わってからと黒子っちに聞いた。
部活が終わるとみんな片付けをしたり、着替えに行ったり自主練をしたりする人がいる。
オレは屍のような黒子っちがいる部室に向かった。
部室の中に入ると、黒子っちは机に顔を預けていた。
その前には赤司っちが座っている。
青峰っちたちは先に帰ったらしい。
「そんなとこに立ってないで座ったらどうだ?」
「あ、はいっス」
赤司っちに言われオレは赤司っちの隣に座った。
黒子っちが回復するまで待っていると、桃っちが部室に入ってきた。
「ごめんね!待たせちゃった?」
ん?
「大丈夫だ。黒子がまだ起きていないからな」
「よかった〜。じゃあ私が話をしよっか?」
「ああ。そうしてくれ」
もしかして・・・
「桃っちも製作者の中にいるんスか?」
オレがそう聞くと、椅子に座った桃っちが答えてくれた。
「そうだよ!今のところこの四人で活動することになってるの」
「へー。そうだったんスか」
質問はそのくらいにしておこう。
後でまた聞く機会があるだろう。
「それじゃあ簡単な説明をするね!たぶんテツ君からは踊ってほしいとしか言ってないと思うんだよね」
「そうっスね」
「それだけでもいいんだけど、どうせなら歌もやらないかってテツ君からの案がきてね。二人はどうかな?」
歌・・・ってことはあれっスか?!
別に歌は下手なほうではないはずだが・・・
「オレはいいよ。黄瀬は?」
「あ、オレも大丈夫っス」
「よかった!それでね、大体の練習は音楽室と体育館で行います。場合によっては誰かの家になっちゃうかもしれないけど・・・それでも大丈夫かな?」
歌ならば音楽室。踊りなら体育館ということだろう。
モデルの予定がなければ問題ない。
二人は静かにうなずいた。
「これが今回二人にやってもらう曲です」
今までピクリとも動かなかった黒子が突然オレたちに紙を渡してきた。
正直驚いた、というのは言わないでおこう。
紙を見てみるとそこにはオレが知っている曲だった。
“mgnet”
それが今回の曲らしい。
「丁度二人なので問題はないでしょう。パートはお二方に任せます。先に歌から行いますので、昼休みに音楽室に来て下さい。さすがに放課後は難しいでしょう」
確かに放課後は部活で結構遅くまでやっているからそこから音楽室に行くというのも大変だろう。
この学校での七不思議は本当に存在しているから。
この話はさておきオレは赤司っちに目を向けた。
赤司っちは黒子っちからもらった紙・・・楽譜をじっと見ている。
わかりやすく黒子っちが探してきてくれたのだろう。
高音と低音がご丁寧に書かれている。
しばらく赤司っちを見ていたから視線に気づいたのだろう。
赤司っちがこちらを見てきた。
「どうした?」
「あ、いや・・・赤司っちは大丈夫なんスか?」
「オレにできないことはないよ。お前こそ大丈夫なのか?」
「大丈夫っスよ!この曲は知ってるんで。それで、どうするっスか?高音と低音」
そこが少し問題なのかもしれない。
二人とも男。
話し合いで決めるしかない。
「主旋律は高音なんだろう?ならお前が知っているところも高音だと思うんだが・・・」
「あ!」
盲点だった。
そこまで考えていなかったっス。
「じゃあオレが高音っスね!」
「ああ。頼むよ」
「了解っス!」
「決まりましたね。踊りに関しては今回は動画で投稿されたものを使いましょう。初めてなのでわからないこともあるでしょう」
黒子っちの案にオレも赤司っちも賛成した。
「それじゃあ少し音程をさげたカラオケ音源を探しておくね」
「ありがとうございます、桃井さん」
「テツ君のためならなんでもするよ!」
今日はこれでお開きになった。
帰り道。
オレは赤司っちと話をした。
「赤司っちがやるとは思ってなかったっス」
「俺だってやるときはやるよ。おもしろそうだったからね」
「へー」
「そうだ。もしよかったら今度うちに来るかい?」
「え?」
「うちなら広いから練習もできると思うが」
「じゃあいくっス!」
この日を境にしてオレは赤司っちとすごく仲良くなれた気がした。