黒子のバスケ

□それは甘い薬
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「ねえ知ってる?キセリョ」

「知ってる知ってる!薬物使用してたんだよね?」

「そうそう。だから仕事なくなったらしいよ」

「うっそ!?私好きだったのにー」

「えー?薬物使ってたんだよ?」

「そ、そうだけど・・・」

「結構前からだったらしいね」

「なんでそんなことしたんだろうね」



うるさい

黄瀬はその場所にちょうどいた。

理由は待ち合わせをしているからだ。

帽子だけをかぶっている状態だが誰も黄瀬に気付かない。

否、気付けないのだ。

なぜなら昔の黄瀬の面影はないからだ。

しばらくその場所で待っていると一人の男が声をかけてきた。


「やあ。待ったかい?」

「・・・別に・・・大丈夫っス」

「そうか。じゃあいこうか」


声をかけてきたのは赤司だ。

黄瀬は赤司と会う約束をしていたのだ。

赤司と言えば、名高い社長を務めており知らないものはいないといわれている。

周りは皆赤司にくぎ付けだ。

しかし、赤司の隣にいる黄瀬に気付くものは誰もいなかった。

黄瀬も自分がどうだろうともう関係なかった。


「どこに行くんスか・・・」

「ボクの家以外にどこがあるんだい?涼太もそんな状態じゃつらいだろう」


そんな状態。

黄瀬はもう薬を大量に摂取しなければ生きていけないようになってしまった。

いつ薬が切れるかわからないのに店で話をしていたら迷惑になる。

赤司はそう判断したのだ。

黄瀬もそれをわかっているのか素直にうなずくしかなかった。

赤司が準備していた車に乗ってしばらくすると高級そうなマンションの目の前で止まった。


「・・・相変わらずすごいところに住んでいるっスね・・・」

「そうか?お前も前は変わらなかっただろ?」

「そりゃ・・・そうっスけど・・・」


黄瀬は呆然とマンションを見ていたが、赤司はそのまま歩き続けたので黄瀬は急いで赤司について行った。

赤司は最上階に住んでいるらしい。

エレベータのボタンが最上階を表している。

部屋に着くと黄瀬は即座にソファーに倒れ込んだ。

赤司は着替えているらしい。

しばらくすると赤司がお茶を持って黄瀬の所まできた。


「さて、涼太。何故ボクがお前を呼んだかわかるか」


赤司の言葉に黄瀬は体をびくつかせた。

赤司が黄瀬を呼んだ理由は黄瀬自身がよく知っている。

しかし、それを口にするのが恐ろしかった。

たとえ恋人であってもだ。

黄瀬がだんまりしていると赤司はため息をついた。


「ボクが言いたいのは何故薬物のことを言わなかったのかということだ」


軽い口調で言う赤司だが声音は低い。

怒っているということがよくわかる。

黄瀬はだんまりしようとしたがこれ以上赤司を怒らせると後先が危ないためいうことを決意した。


「・・・征十郎さんに迷惑がかかるから・・・」


そう言い終わると黄瀬はそのまま話し出した。


「初めは軽い気持ちだったんスよ。ちょっとストレスがたまってて・・・少しだけ飲んでもすぐ治るって言ってたから・・・でも実際は違った。一回飲んだら次が欲しくなった。もっと欲しくなった。そしたらもうこんな状態。初めは征十郎さんに言おうかと思った。でも丁度大事な契約があって邪魔しちゃいけないって思った。でも・・・」

「もう、迷惑かけているっスね・・・ごめんなさい」


黄瀬は頭を下げた。

赤司は静かに黄瀬の言葉を聞いていた。

黄瀬は頭を上げようとはしない。

赤司を見るのが怖いから。

そんな黄瀬に赤司はため息をつくと黄瀬の頭を優しく撫でた。


「迷惑なんて思ったことはない。むしろ今言ってくれてありがとう。そして、辛い思いをしている涼太に気付けなくてすまなかった」

「〜〜〜っ違う!!オレが悪いんスよ!!」


黄瀬は勢いよく顔を上げた。

それを狙っていたのか赤司は黄瀬を抱きしめた。


「そうだね。涼太が悪い。だから恋人であるボクにも責任はある」

「・・・それでも・・・」

「お前が納得する必要はない。お前は僕のことだけ聞いていればいい。ほら、顔を上げて?」


赤司に言われた通り黄瀬は顔を上げた。

色違いの目が黄瀬をじっと見ている。


「これから少しずつ治していこう。大丈夫。お前ならできるよ。ボクだって協力する」

「でも、征十郎さんが・・・」

「迷惑だなんて思っていない。むしろ涼太のためだからうれしいよ。お前が大変なのにそんなことを言うボクは嫌いかい?」


赤司の問いかけに黄瀬は首を横に振った。


「嫌いじゃないっス。むしろ惚れ直したっスよ。ありがとう、征十郎さん」

「どういたしまして。それじゃあまずカバンの中に入っている薬をもらおうか」


そういうと赤司は黄瀬の許可もなくカバンから薬を取り出した。

黄瀬は少しためらったが薬を取り返そうとはしなかった。


「苦しくなったら何をしてもいい。それこそここにあるものを壊しても構わない。そのかわりボクも全力で涼太を止めてあげる。それでいいね」


赤司の問いかけに黄瀬はうなずく。

その答えを見たら赤司は薬を持って部屋から出て行った。

それがスイッチになったのか。

薬が丁度切れた。

黄瀬は苦しくて仕方がなく机の上にあったコップを落としてしまった。

幸いお茶はなくなっていたので火傷をすることはなかったが破片が散らばっていた。

黄瀬はそのまま破片にも気付かないのかもがき苦しみながら破片を踏んでいる。

足からは血が出てきている。

コップの割れる音を聞いたのか赤司が急いで戻ってきた。

足にけがをしている黄瀬を見た赤司は黄瀬をソファーに押し倒し、赤司もその上に乗る。

黄瀬は赤司に気付かないのか暴れている。


「くすりい!おねがっ!ちょうだい!」


黄瀬はずっと叫んでいる。

約束をしても実際薬が切れると我慢ができなくなるらしい。

赤司は強引にキスをした。

しばらく暴れていた黄瀬だが徐々に抵抗をしなくなった。

そのまま赤司は舌を黄瀬に入れてくる。

黄瀬はそれを受け入れた。

黄瀬の頭はもう快感で真っ白になっていた。

しばらくディープをしていたが、これ以上は黄瀬が危ないと判断した赤司は黄瀬から離れた。


「はぁっはぁっはぁっ・・・」


しばらく黄瀬は酸素を欲しがっていた。

頃合いを見て赤司が黄瀬に問いかけた。


「大丈夫かい?」

「・・・わざとっスか?・・・」


黄瀬は赤司をにらんでいる。


「別にそんなつもりではない。薬を欲しがっていたからあげたまでだ。いい薬だろ?」


そういいながら赤司は舌を出してきている。


「確かにいい薬っスね・・・でもね、征十郎さん。オレはそんなんじゃ全然足りないんスよ?」

「おやおや。もっと欲しいのか?」

「欲しいっていったら?」

「今はだめだ。お前の足を診ないとな」


そういって赤司は救急箱を取り出し、黄瀬の足を診た。

幸い小さいかけらしか踏んでいなかったため出血量は少なかった。

ちいさな破片を取り出し包帯を巻いておくことにした。

その後コップの破片の片付けをした。

途中で黄瀬も手伝うといってきたがその足であまり動かしたくなかった赤司は止めた。

片付けが終わると赤司はソファーで待っている黄瀬の隣に座った。

黄瀬はご機嫌そうに赤司を見ている。


「征十郎さん、早く薬頂戴?」


それは甘い薬

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