Short BOOK1-NARUTO-

□『やさしいひと』
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『やさしいひと』










夜の暗闇にも鮮やかに映えるさらさらの金髪、深く透き通った空色の双眸。
昼間の騒がしさを除けば完璧な美少年なのに、よく見れば少年らしさ以上にしっかりした体つきにも、どうして気が付かなかったんだろう、と思う。

凪いだような静かな雰囲気と表情は、まるで昼間とは正反対。


じっと飽きることなく見つめていた私を見かねたのか、彼が私の髪を梳く手をとめて身を起こした。重なった視線に、どきりと胸が鳴る。






「どうした、いの」





「…ナルトって、本当はドベじゃないのに、里のために素を隠してるのよねー?」






自分が彼の素に気付いてからもう6ヶ月経つ。

その間に自分は彼に惚れ、今となっては恋人という関係にあるのだが。






「ああ、オレは里の“忌み子”だからな。ドベじゃないと知れたら里人は夜安心して眠れなくなるだろう。今以上に危険視される」






里の人の彼への態度は知っている。

否定したくて、寝転がったまま彼にすりより、ぎゅっと抱きついた。


彼は素が知れて以来、夜になるとこうやっていのの部屋に訪れては真夜中になると去っていく。
恋人になるまではそれも時々で、長居もしなかったのだが、今では毎日と言っていいほど訪れて、いのの添い寝のようなことをして帰るという習慣ができあがっていた。


彼のぬくもりを堪能しながら、いのは溜め息をつく。






「どうして忌み子なのよー?むかつくわー」






彼はもう一度いのの蜜色の髪を梳き、屈み込んでやさしく口付けてきた。

夜のナルトでは滅多に見られない笑みに、また心臓がはねる。






「いのは、まだ知らなくていい。オレはいのが素のオレを知っていれば、」






今度は少し長いキス。






「それで十分」






唇を少し離しただけの距離で言われた言葉に、心拍数が上がる。






「…お人好しなところは、昼も夜も変わらないわね」






笑みを深めた彼が、また唇を重ねてくる。

角度を変え、啄ばんで、何度も、何度も。
息が続かなくて薄く開いた口に、すかさず彼の舌が入り込む。


とろけるほど優しくて、溺れるほど甘い。






「ん……っは、ぁ、ん」






「……いの。もう時間だ」






ようやく唇が離れたとき、名残惜しそうにもう一度ちゅ、と口付けてからナルトが言った。






「また明日、いの」






最後に愛しそうに名を呼んで、彼は姿を消した。






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