Short BOOK1-NARUTO-

□『やさしいひと』
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やっぱり。

いのは彼のぬくもりが少し残るベッドに顔を埋めて丸くなった。


やっぱり、彼は抱いてくれない。

いつも、キスで終わり。
それ以前に彼は謎が多すぎるのに。

夜この部屋に来るときも、同期の忍の中でも気配に敏感なはずの自分が、それにしたって階段下には上忍の父親がいるというのに、その姿を見るまで気配に気付けないし、父にも気取られていないらしい。

そもそも、素を知っているといっても、ただ彼の性格が静かであることと、思った以上にルックスがいいこと、少なくとも自分より気配を消すのが上手いことくらい。

本当はどれくらいの実力かなんてわからないし、真夜中よりあとに何をしているかも、さっきの“忌み子”のことだって、彼は知らなくていいと言って教えてくれない。


彼について知っていることが本当に少ない。
だから、どうして彼が自分のもとへ来てくれるのか、自分を好きだと言ってくれるのかが、わからない。
自分に冷たくあたる里人にも庇い立てするくらい優しい彼のことだ、本当は好きでもなんでもなくて、ただの情けなのかも。


いのはゆっくりと溜め息をついた。






「ダメねー、ネガティブになってるわー…」






布団を頭の上まで引っ張りあげて、目をぎゅっと閉じる。


大丈夫。

彼はきっと自分を好いてくれている。


大丈夫よ。



言い聞かせるように心の中で呟きながら、やっとうとうとし始めたのは、空が少し白み始めてからだった。





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