陰陽師

□生きる理由
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「なぁ晴明、何故人はこの世に生を受け、生きてゆくのだろう…。」


晴明と博雅は、濡れ縁で酒を飲んでいる。

晴明の邸の庭は、一面白に覆われていた。

博雅は、音もなく天から降り注ぐ雪を見ながら、口を開いていた。


「そして…いずれ死んでしまう…。」

「うん。」

「なんとも、儚いなぁ…。」


二人の間には沈黙が流れていた。


晴明は、酒を口唇に運んでいた手を止めて、博雅を見た。


「博雅、では何故人はこの世に生を受け、いずれ死ぬる運命なのに、この世に生きつづけようとするのだ?」

「むむっ…。」

「何故だと思う?」


晴明は、いつの間にか寄りかかっていた柱から離れ、博雅の傍らに移っていた。

そして、博雅の顔を覗きこんでいる。


「むむっ…。」


博雅は問い詰められて、黙りこんでしまった。

そんな博雅もお構い無しに言葉を続けた。


「この世に生きているのは、人だけではないぞ。例えば、この庭に咲いている花や木々も生きておる。それに、この雪だって生きておるのだ。」

「む……、よく分からなくなってきた……。」


晴明は、口に笑みを含んだ涼しい顔で、難しい顔の博雅を見つめた。

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