陰陽師

□何でも…
1ページ/1ページ


「なあ晴明…。」

「なんだ…?」

「俺がここに来たとき、濡れ縁で倒れていたが、その…大丈夫か?」


酉の刻ごろである。


「ああ…、別に大丈夫だ。」


晴明と博雅は情事の後で寝所にいた。


「そうか…良かった…。」


博雅は安心したように微笑し、晴明を抱き締めた。


「というか…今それを尋ねるか…。」

「へ!?」


博雅の顔は真紅になった。


「俺をこんなにして…、いったい何回抱いたのだ?」

「うっ…、すっ、すまぬ。」


晴明は細い白い腕を博雅の首に絡めさせながら言った。


「まったく…、俺は明日動くことが出来ぬぞ…。」


博雅は小さくなっている。


「すまぬ…、明日何でもしてやるから…。」


すると、博雅の首のあたりで動いていた晴明の手が、ぴたりと止まった。


「せっ…、晴明?」


博雅は晴明の顔を覗きこんだ。


「博雅…お前は今“何でも”すると言うたな?」


晴明は怪しく笑った。


「おっ…男に二言はない!!」

「ほう、そうか…明日が楽しみだな…。」

「むむ…。…晴明、何を企んでおるのだ?」

「何も企んでなどおらぬさ。…それより博雅、俺はもう寝るぞ。」

「あっ、ああ。」


晴明はそう言うと、博雅の腕の中でもぞもぞと動いた。

良い位置を見付けたのか、晴明の動きが止まると、次には規則正しい寝息が聞こえてきた。


「おやすみ、晴明…。」


博雅は晴明の額に優しく口付けを落とした。



――翌日、博雅は晴明に“何でも”したそうだ。

end.


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ