陰陽師
□春
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「晴明?居るか?」
源博雅は、一人徒歩で晴明の邸にやって来た。
左の手には、土産の肴が入った籠を持っていた。
「…晴明?」
門はいつもの通り開け放たれていたが、出迎えてくれる式神はいなかった。
「晴明?上がるぞ?」
博雅は、家の主の返事がないのに邸に上がるのは、少し気が引けたが邸に足を踏み入れた。
廊下の角を曲がると、いつも二人で盃を傾ける濡れ縁が見えてきた。
右手には荒れ野をそのままもってきたような庭がある。
「……晴明!!」
博雅は庭のある一角に人影を見つけた。