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□001 夜明け前
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その夜突然乱入してきた客は勝手知ったる何とやら、ヒイロの向かいにどっかと腰掛け、延々と陽気に話しかけてくる。
「って事で、仕事も一緒の部屋で済ませた方が楽しいだろ?」
これが部屋の光熱費削減を目的に、仕事道具片手にやって来た乱入者=デュオ・マックスウェルの言い分だ。
もちろん無視して黙々と仕事を続けるが、デュオは気にもせず話し続ける。返事など最初から期待していないのだろう。
やがて訪れた沈黙。その人物の来客時にはほぼ間違いなく静寂と無縁となるはずの空間も、当の主が熟睡している為実に静かだ。マグカップに指をかけ、机に上半身を丸ごと預けながらも最後まで睡魔と格闘しつつ、寝入ってなお何か言いたげに微かに開いた口元。
ふと顔を上げると、窓から覗く闇が青味を帯びており、まもなく朝がやってくる事を無言で告げている。
「そうだな」
夢の中の住人にヒイロは返事をした。楽しかったと。
覚醒中には絶対告げる気の無い、その本心を。