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□花より団子
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散り始めた桜を見ようと誘ったのは、なんとヒイロだった。
「珍しい事もあるもんだな」
デュオは柔らかな春の風に長い髪を揺らしながら、ヒイロの隣りを歩いている。
そんな少年二人の肩に、桜の花びらがそっと降り注ぐ。静かに、そして優しく過ぎていく時間。
「でもさ」
デュオはやはり無口ではいられない。
「そろそろ腹減ったな」
ヒイロの脳裏に【花より団子】の文字が流れていった。まさに今のデュオを表すのに相応しい。
ロマンの欠片もありはしないが、隣にいる人物がデュオなのだから仕方が無い。
「なぁ、ヒイロ」
続けてデュオは話続ける。
今日位は少し黙って欲しい気分のヒイロだったが、何も言わずに黙って前を向いている。
「来年は……」
デュオがヒイロの顔を覗き込む。
「月夜の深夜に来ようぜ」
ニッコリと笑う。
「そしたらさ、俺達二人の貸切りだぜ」
「ああ」
ふいに大きく吹いてきた風に桜の花びらが一斉に空を舞い、彼らの歩いて行く道を祝福している。
幸せそうな二人に、これが君達が望んだ争いの無い世界なんだよと唄っていた。