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□しゃぼん玉飛んだ?
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子供みたいに――実際まだ子供と呼んで不思議ない歳頃ではあったが――デュオはしゃぼん玉を飛ばして、ひどく幸せそうな顔をしていた。
「ヒィさんもしようぜっ」
声をかけた先にいる、相変わらず無口・無愛想・無関心が信条なヒイロは、想像通り無反応。無視してサッサと立ち去ろうとするのを、何を勘違いしたのかデュオの方から近づいていった。
「なんだ?もしかして、しゃぼん玉飛ばすのって苦手かぁ?」
仕方が無いなぁ、よしよし、人生何事も経験だっと、ヒイロを無理矢理引きずって来るデュオ。
「何故そうなる」
と口を開けば、問答無用でストローを突っ込まれた。
「不得手な物なんて誰にでもあるんだからサ、恥じるこたぁないさ」
たとえ天下無敵のヒイロ様だって……とヒイロ的にはサッパリ訳の分からない理屈で、その遊びを押し付けられたのではヒイロもたまったものではない。
が、このまま固まっていても開放して貰える確立は低いと判断し、不承不承息を吹き込めば、小さなしゃぼん玉が複数パッと舞った。
「おっ、ちゃんとできるじゃないか」
「?」
ヒイロの記憶にあるしゃぼん玉と少し違う。
「ヘッヘ〜ン。変わったしゃぼん玉だろ?何を混ぜたかは内緒だぜ」
思いっきり得意げなデュオ。
「他にもおっきなのとか割れにくいのとか、いろいろあるんだ」
なんか癪に障る。そう思ったヒイロは、デュオの手にするストローを全てひったくって、そこから大量のしゃぼん玉をデュオの顔面に大量発射!
「あははは、楽しいだろ〜」
全然堪えてない笑い声に、増々苛立つヒイロだった。
その日は天気も良く、デュオも気分良くお洗濯。
「うーん」
伸びをして、見事に青い空を見上げた。その見上げた先にぷかぷか浮いている物は――透明な
「雲?」
いや、違う。どう見ても規格外れな大きさの
「しゃぼん…玉?」
そこへ携帯からコール。しゃぼん玉から目を逸らさず携帯を耳へ当てると
「俺だ」
聞き馴染んだ低い声。ヒイロだ。
「まさかとは思うんだが。お前か?」
主語がきれいさっぱり抜け落ちていたが、ヒイロは正しく理解していた。
「そうだ」
そのちょっとしたモビルスーツクラスの大きなしゃぼん玉は、割れもせず風に乗って漂い続けている。
「何を混ぜたかは内緒だ」
相変わらず腹が立つ程の淡々とした声。絶対、夕食賭けていいって位断言できる。
今ヒイロは、憎ったらしい程の微笑をあの普段無愛想そのものの顔にベーーッタリ貼り付けているに違いないっ!
それを証明するかの様に新たなしゃぼん玉が、再び青空の元ふわふわ漂っていくのだった。
その後、この地が【UFO愛好家】の聖地となり、毎年大量の観測者が訪れる様になったらしい。