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□♪春祭り
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「行こうぜ!!」
バタンとヒイロの玄関の扉を開けて入って来たのはデュオ。
それは、いい。
とり合えず、それはいいとする。

が・・・

なぜタキシードなんだ!
ヒイロご自慢の完璧なる内蔵コンピューターが解析不能を告げる。
「今日は、春祭りだって言ってたのは、旦那だろ?」
ああ、それは覚えがある。
だが、それだけだ。
「早くヒィさんも着替えろよ」
何にだ?
まさか俺にまでそれを着て行けというのか。

「断る」

「なぁ〜んだ、持ってないのかぁ。
 おっとこのこのたしなみだぜ。
 一着位、買っとけよ」

「普通…」
今のはヒイロ。
「普通?」
今のがデュオ。

「祭りに燕尾服は着用しない」
「なにぃ〜」
当たり前だ。
今のはヒイロのつぶやき。
嘘つきぃ。
今のがデュオのつぶやき。


「いったいなぜ、タキシードなんだ」
ヒイロもやっと自身のペースを取り戻し、ストレートに疑問をぶつけてみる。
「この前…」
じとっとデュオがヒイロを睨む。
「春祭りってよく分らないから、パーティみたいなもんかって聞いたら、頷いただろ」

カチカチカチカチ・・・
ヒイロが内蔵メモリを検索中。
データ無し。
「忘れたのか?」
正解。


「そこで本、読みながらさ…」
デュオの口は止まらない。
ヒイロは静かに日常生活例を検索開始する
「おいおい…」
無口になったヒイロを気にかける事無く、デュオは喋り続ける。
ヒイロはパターン解析を続ける。
該当パターン例5・くだらない事を喋りたおすデュオ
該当例対応パターン最有力候補・適当に頷くヒイロ
納得するデュオ
無意味・無駄と判断された日常データは削除
「ヒーロく〜ん?」

データが存在しない理由との附合確立87.9%
ヒイロは納得した。

「普通…」
「普通?」

「祭りには浴衣だ」
中略で答えだけを告げる。
「ふ〜ん…浴衣かぁ」

一件落着。


「で、行くのか?」
「いや、止めとく。
 この格好じゃ変なんだろ、どうせ」

大正解。

「夏祭り」
しょげた三つ編み頭に、ヒイロが声をかける。
「浴衣は夏祭りに着ればいい」
「そっか。
 了解!」



窓を開くと遠くから祭囃子が聞こえてくる。

散り始めた桜を見ながら、デュオはもう、夏が待ち遠しくて仕方がないらしい。
きっと又祭りに行こうぜと、けたたましくヒイロの部屋のドアを開けるに違いない。

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