1x2

□君の隣りに
1ページ/4ページ

 今日はクリスマスイヴ。だからと言って、皆が皆クリスマスモードという訳ではない。

 そんなタイプの一人、ヒイロはその日の朝、道端で水の音を聞いた。
 こんな寒い朝に水遊びをする様な馬鹿はいまい...とそのままやり過ごそうと思ったが、水音に混じって絶え絶えに人の声がしている事に気付く。

(『馬鹿』発見 直行する)

 嫌な予感に駆られて現場を目指すと、デュオが冷え切った池で水遊びの真っ只中!
 いや、溺れていた。

「ターゲット確認、これよりターゲットを『馬鹿』と呼称する」
 あんまりと言えばあんまりな呼び名だが、当のデュオは風雲急を告げるといった状態であり、又、状況はあまりにも的を得ている。

 なんとか這い上がろうと氷の端に手をかけるのだが、無情にも氷は砕けて水中へ落ち彼の希望を妨げる。
 体力もそろそろ限界。自分の葬式の光景なんかがちらつく。
「冗談じゃないぞ!」
 そこへ・・・。

  ボチャン

 ヒイロが飛び込んで来た。

「おい、こいつ、『馬鹿』か?」
 自分もヒイロにそう呼称されているとも知らず、デュオはそう思った。
 だが、かすかにではあるが助かる希望が見えてきたのか?
 一方ヒイロはデュオの背後から軽々と片手で彼を抱え込み、もう一方の手で這い上がろうと氷に手をかけるが、やはり氷は脆く崩れ落ちる。

 ヒイロといえどもさすがに無理か・・・さて、どうしたものかと飛びかける意識にしがみつきながら、もう一度ヒイロを観察してみると、砕ける氷に怯みもせず、いや、むしろ積極的に崩壊させながら平然と岸を目指している。

  嘘だろ、おい!!

 この凍える水の中でそんな事、できっこない!!
 そう思った直後の記憶はデュオには無かった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ