泡沫ノ恋

□forth.
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「1週間ぶりの学校だなぁ…」
「作兵衛が鬱ぎっぱなしだったからな!ほら、元気出せよ作兵衛!」
「朝っぱらからおめぇらの捜索のせいで元気なんか出ねぇよ…」



1週間ぶりの学校、か…
あの日、雅を自ら手放した日から、俺は動けずにいた。

怖かったんだ。学校に行くってことは、雅に会う確率が高いってことだ。アイツが俺を見た時の反応を見るのが怖い。



「作兵衛は気にしすぎなんだよ。いいじゃん。見かけたら“いいケツしてんな!”ぐらい言ってやれよ」
「更にどん引かれること間違いねぇだろ!!」
「あ、雅だ」
「えっ?」
「うっそぴょーん」
「っ…てンめぇふざけんじゃねぇぞ!!」



三之助のバカヤローを殴り飛ばして、そのまま教室へと引っ張った。これ以上校門に留まれば、本当に会ってしまいそうだったから。

どんな顔をして会えばいいんだよ。なんて声をかけりゃいいのか、なんてわからねぇ。

でも、遠目からでもいいから、見たい気持ちもあった。元気でいるなら、それでいい。























――――――…



「ああああああんた本気なの!?」
「だって…」
「富松あんちくしょうと友達になるなんて自殺行為よ!!」
「でも、」
「今度は監禁じゃ済まないかもしれないわ!」
「しーっ照代ちゃんしーっ」



クラス全員がこっちを向いている。監禁なんて大声で言うことの方が自殺行為だと思うけど、それを言っても聞かなそうだから口を塞いだ。照代ちゃんはパックのお茶を一気に飲み干し、凹んで紙くずと化したパックをゴミ箱に投げた。



「富松くん、結局私のこと解放してくれたし……あんまり悪い人じゃないのかな〜、なんて…」
「悪い人よ。出逢ってすぐ人を拉致監禁する人のどこが悪い人じゃないって?」
「それは…若気の至りというか…友達から始めれば良い関係を望めるんだよっ」



この1週間、富松くんには会えなかった。だから、話す機会がなかったのだ。けれど、伊賀崎くんから今日は来ていると話を聞いて、今日こそ話してみようと決意した。

忘れられないんだもん…
あの時、襖を閉める瞬間に私を見る彼の表情は、悪い人のそれじゃなかったこと。暗く濁った瞳ではなく、求めすがるような…



「私は反対よ。危険だわ」
「そんな…」
「この話は終わり!1時間目が始まるわよ」



こんな日に限って、体育がない。唯一、絶対に彼を見失わない時間なのに…
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