恨み辛みの果て
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「な、なぜ…」
「雅せんぱーいっ」
「あっ団蔵ずるい!先輩っ僕も抱っこー!」
「押すなよ兵太夫!」
飛びついてくる良い子達。まさか、この大人数で行くのか!?めっちゃ目立つぅぅううッッ!!
――――――…
「はぁ…」
「…今日は、やけにため息が多いですね」
「照星さん…」
わしの手に握られた手紙に、視線を落とす。それは、我が息子虎若からの文だった。週に一度来る文の内容は、最近おかしい。
虎若は、今は亡き我が娘の雅が、未来から戻って来たと書いて寄越した。しかし、それはあり得ない話。わしも、最初は夢の中の話をしているのだと思っていた。ところが、今回の文には、“雅を連れてくる”と書いてあるではないか。
「虎は、いったいどうしてしまったんだ…」
「……」
「あの子は、もう居ない。帰って来るはずがない…」
今でもはっきり覚えている。
降りしきる雨。その中での、葬儀。皆が泣き、悲しんだあの日。土の中に消えていく我が子の棺桶を、わしがどんな思いで見送ったか。
―ごめんなさい…ごめんなさい…俺が、守らなきゃならなかったのに…ごめんなさいっ…
許しを請う、雅にとって兄的存在だった食満くん。何度も何度も、地面に頭を擦り付け、涙を流していた。
あんな姿を、忘れることができようか。
「もし、若太夫の言うことが真実だったら…本当に雅が帰ってきたら、どうしますか」
「…帰ってきたら…抱きしめます。“おかえり”と、言ってあげます。」
娘を、1度だけでいいから雅を抱きしめ、別れを言う機会が欲しい。そして、謝りたい。
独りにしたことを。苦しませたことを。父親として、家族として何もしてやれなかったことを。
「ほら、姉ちゃん早く早く!」
「ちょっと休ませてよ虎〜…」
「姉ちゃんは本当に体力ないなぁ…父ちゃんただいまー!姉ちゃん連れてきたよ!」
夢か幻か。
どちらでもいい。
我が子が、帰ってきたのだから。