恨み辛みの果て

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――大川学園

昔は忍者の通う学校だった、という噂がある。そんなバカなと思いつつ、そうであったら何て素敵なんだろうとも思う。

ただ一心不乱に、無心のまま勉学に励むより、仲間でもあり好敵手でもある人達と切磋琢磨して高みを目指すほうが、どんなに充実しているだろう。



「…見て、鉄火面が来た」
「友達がいるわけでもないのに、よく来るわ」
「あの子は“真面目”だからね」



平成というこの世界は、とても淡白で、残酷だ。

自分が嫌だと思った相手には、とことん苦痛を味あわせる。それまで仲が良かった子までもが、自分の保身のために目の前で繰り広げられる光景を遮断するのだ。

そもそも俺にはそんな友達もいないため、“裏切り”というものがどれだけ辛いのかは知らないが。



「知ってる?あの子、家族にも敬語なんだって」
「えーっ他人じゃないんだからさぁ」
「血が繋がってないっていう噂よ」



あることないこと言われ、傷つかない人間なんていない。立ち止まって、少しだけ、本当にチラリと見ただけで――



「やだっ睨まれた!」
「なんなのアイツ、本当のこと言われたからって」
「もう行こうよ!」



どんなに辛くたって、酷いことを言われたって、相手にはしない。そんなのに一々左右されていては、心身ともにもたないだろう。

だから俺は、目を閉じるのだ。
辛い現実を見たくないから、独りであることを自覚したくないから。

これが、ヘイセイで取り残された俺の、生きるための最善の術だから。
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