恨み辛みの果て
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「雅っ…戻ってきてくれたのじゃな…!」
名乗った瞬間、男の人は目を見開き、俺は学園長先生とやらのいる場所に連行された。
学園長先生(仮)は涙を流し、何度も「すまない」と繰り返す。
俺はどうしたらいいかわからず、とりあえず適当な相づちを打ちながら首を押さえた。
「変わらないのぉ…その女らしからぬ性格、頭が混乱すると首の後ろを押さえるクセも…」
「はあ…」
「…すまなかった…辛かったろうに…」
「(何を言っているのかわからなくて辛いんですが)」
「お主には何度謝罪してもし足りん。恨まれても当然のことをしたのじゃからな…」
「(この時代の俺ってどんな生涯送ったんだ!?)」
温和そうなじいさんを恨むって…
いや、このじいさん、もしかしたら優しそうに見えてすっげー最低な奴なのか?
いやいやいやいや、考えすぎだろそりゃ。
「あ、あの…」
「む、どうした?」
とりあえず、勇気を振り絞って言ってみよう。
「俺、あなたのことまったく知らないんです」
所々、夢とリンクしているおかげで、この時代の自分がどんなくたばり方したのかはわかる。
土井先生(さっき聞いた)や、この学園長先生だって、まったく初対面という感じはしない。だが、知らないもんは知らないのだ。
「なんとっ…記憶がないと…!?」
「はい。なんかすみません…」
なんだこの罪悪感。
ちょ、そんな俯かないで下さい学園長先生!
「そうか…そうじゃな、覚えていなくてよかったのかもしれぬ…」
「学園長先生…?」
「雅!」
「はいっ!?」
突然立ち上がった学園長(背小さ!)は、持っていた杖の先を向けてきた。ちょ、近い近い。ちょこっとだけ鼻に当たりましたよ。
「お主、行く宛もないじゃろう。ここで住み込みで働かぬか」
「は、はあ………は?」
「お主がいなくなってしまってから、すっかり学園から覇気がなくなってしもうてな…。この学園を元に戻せるのはお主しかいない!頼む!」
えええええええええ。
そんな土下座されたら嫌だなんて言えないじゃないですか。
確かに行く宛もないし、元の世界に戻れる保証はないからありがたい話ではあるけど……嫌な予感しかしない…
「私からも頼む、雅」
「えっ土井先生…!?」
「お前を見殺しにした私が、こんなことを言う資格なんてないのはわかっている。だが、お前がいてくれれば、みんな正気に戻るかもしれない」
あああ、土井先生まで土下座を…!
「ぅ…わかりました…」
「!」
「本当か!?」
「はい…」
ここから追い出されたら、俺は元の世界に戻る前に野垂れ死んで、土に還っちまう。
…うん、これでいいんだ。……たぶん。
「そうか、そうかっ…なら今すぐにでも部屋を手配させよう!土井先生、五のろの竹谷八左ヱ門はまだ一人部屋じゃったな」
「はい。すぐに手配します」
おおぅ…さすが忍者。
もういないよ。
ああ、神様。どうかここでの生活はうまくいきますように…