恨み辛みの果て

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―――――…



「で?」
「え?」
「……私に話があったんだろ」
「ああ、そうでした。えっと、単刀直入に聞きます。この時代の雅には、何があったんですか?」



言葉を詰まらせた。
まさか、そんな。こんな早く聞かれるとは思っていなかった。まだ、全てを話す覚悟なんて、できていないというのに…

どうする。
どうにかしてはぐらかすか?
だが、私は昔から、雅の真っ直ぐで真剣な眼差しで見られるのが苦手だった。全てを打ち明けないと、苦しくなる。

今回だって、例外じゃない。



「ずっと…って言っても今日だけだけど、気になってたんです。言ってましたよね、土井先生。俺に対して意見を言える立場じゃないって。それはなぜですか。この学園では、“雅”は一介の生徒に過ぎない。それなのに、なぜ意見を言えないんですか。それに、ハチやその友達は、泣きながら何度も何度も謝ってきました。どいつもこいつも、すごい隈まで作って、“償いのためだから”って言ってました。彦四郎と庄左ヱ門も、泣きながら“どうして死んだんだ”と言いました。あいつらが危険な任務ばかりするのは、この時代の雅が、あいつらに殺されたからなんですか?」



一つ話したら、もう止められない。そんな感じで、雅は一気に疑問をぶつけた。

さすが雅。普通なら、見知らぬ場所に来たら取り乱して、そんなことを考えることなどできない。彼女は持ち前の冷静さと、頭の回転の早さで、真実を掴みかけている。



「今は、話せない」
「土井先生!」
「時が来たら話す。だから今は…」



話したら、お前は帰ってしまうだろう。話せない、話してはいけないんだ。

これはお前のためであり、あの子達のためである。



「そ、ですか…」
「すまない…」
「いえ、そちらにもいろいろ事情があるでしょうし…無理言ってすみません」



そう言って、雅は首の後ろを押さえた。混乱した時の癖だ。多すぎる疑問が、頭の中でこんがらがってしまったのだろう。

本当は、すごく不安だろうに。
知らない場所に来て、自分の知らない人間が自分のことを知っている。もし私がそんな状況に陥った時、私は平静でいられるだろうか。

雅だから、できるのだ。



「じゃあ、代わりにお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい。この学園の人達の名前を、教えて欲しいんです」

「…え?」



やはり私は、彼女には敵わない。
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