恨み辛みの果て

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「左門、先輩がいないんだ。どこにいるか知ってるか?」
「作兵衛…先輩は…」
「困ったな、今から用具委員会の集まりがあるんだが…」
「っ作兵衛!先輩は、雅先輩はもう死んだんだ!探したってどこにもいない!」
「…何言ってんだよ。先輩が死んだ?んな訳ねぇだろ。先輩が死ぬはずねぇ」
「死んだんだ!葬儀にだって出たじゃないか!先輩が命懸けで学園を救ってくれたのに、作兵衛が壊れたら意味がない!」
「や、やめろっやめてくれ左門!あっあああっ違う!先輩は死んでない!…きっと迷子になってるんだ…あの人は少し抜けてるから…そうだ、探しに行かなきゃ…あの人は寒がりだから…」
「っ作兵衛!正気に戻ってくれ!!」

















僕の友人である富松作兵衛は、雅先輩が亡くなってから可笑しくなってしまった。

遺体を一番最初に発見したから、先輩がもういないことを一番よく理解しているはずなのに。否、一番最初だったからこそ、理解し難いのかもしれない。

作兵衛は、雅先輩のことが大好きだったから。


でも、作兵衛の行動には、あまりにも痛々しくて見ていられないものばかりだった。

先輩を探し回ったり、先輩と話してたと言ってみたり、行動パターンは決まっていた。

最近は、やっと雅先輩が亡くなったことを自覚し始めたようで、そんな行動はなくなっていた。

けど、時々、本当に稀に――



「作兵衛、起きてて大丈夫なのか?」
「ああ。心配かけちまったな、すまねぇ」
「気にするな!」
「そうだ、左門。先輩がどこにいるか知ってるか?」



稀に、こんな質問をしてくる。
だが、もう僕たちはこんな時の対処法を覚えた。

“先輩は今、学園長先生のお使いに行ってる”

そう言えば、作兵衛は納得して再び眠る。



「作兵衛、先輩は…」

















先輩は、今部屋にいるよ
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