恨み辛みの果て
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―――――…
「ふ、あぁ…よく寝たー」
もぞもぞと起き上がり、体を伸ばした。暖かい布団から這い出したときの微妙な肌寒さは、心地好いというより布団が更に恋しい。
誰かが起こしてくれるまで布団の中で待とうかな、なんて…
「…ん…せんぱい…?」
「おう、おはよう、作兵衛」
「おはようございます…」
まだ寝惚けているのか、作兵衛はもぞもぞと動いて俺の膝に頭を乗せた。そして、すりすりとすりよってくる。
何この可愛い生き物。
お持ち帰り決定じゃないか。
「作兵衛ー、着替えてご飯食べに行こう。お腹空いちゃった」
「んー…」
名残惜しそうに離れる作兵衛の頭を撫で、部屋に戻って着替えるように言った。最初は少し口を尖らせたが、待ってるから、という一言でダッシュで部屋に戻っていった。
単純な…
「さて、と…俺も着替えるか…」
さすがに、昨日と同じ着物はまずい。臭いとか気になるお年頃なんで!
新しい服に着替え、髪を結い直す。この世界に来た翌日に机の中から発見した赤茶色の髪紐をつけ、鏡の前でチェック。
うん、完璧!
「さて、と…そろそろ来るかな」
なんて口に出した瞬間だった。
パタパタと走る音と、障子を開け放つ音が耳に入り、振りかえる。
「あれっ左門?」
「俺もいまーす」
「す、すみません、先輩。こいつらすぐに迷子になっちまうんで、一緒に連れてってもいいですか…?」
キュッと眉を下げ、上目遣いの作兵衛。そんな可愛くお願いされちゃ、断れないだろ。
いや、はなから断る気無かったけどさ。だって、両手に華じゃないか。こんな可愛い3人組を傍らに…
「全然大丈夫だよ。じゃあ、行こ「「先輩!!」」ぐはぁっ!?」
「あっ先輩!こらお前ら!先輩になんてことをっ…」
突然のタックル(2人分)を受け、腹が減ってなくてもお腹と背中がくっつく錯覚に陥った。ありえんが。
「先輩、ありがとうございます!」
「作兵衛が元に戻ったんだぞ!」
むぎゅむぎゅとしがみつく2人を宥め、部屋を出る。
みんな、忘れてはいけないよ。俺は忘れてたけど。
ここは、俺とハチの部屋なのである。もちろん、衝立の向こうにはハチが寝ていた。
と、いうことは、今朝のイチャイチャから今の大騒ぎまで、しっかり聞かれていたというわけだ。
「くっそー…あの2人、イチャイチャしやがって…リア充か、リア充なのか!?リア充爆発しろ!!」
「…三郎、ハチどうしたの?」
「雷蔵、俺に聞かれたって、俺もわからないよ」
「そっか、役に立たないな」
「…」