恨み辛みの果て
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「……」
地面に空いた小さな穴から、煙が出ている。どうやら、火縄銃なるもののようだ。その穴は、数秒前に俺がいた場所に空いていて、自意識過剰でなければ俺を狙ったようだ。しかし、俺は寸でのところでもんじ先輩に腕を引かれ、間一髪逃れられた。
「クソッ曲者めっ…!」
「ぅおう…」
もんじ先輩は俺を後ろに庇いつつ、後退りする。
ていうか、なんで火縄銃に気がついたんだ?さすが忍者クオリティー…
「火縄の匂いだ」
「えっ」
「ばかたれぃ、口に出てんだよ。火縄の匂いで気づいたんだ」
「な、なるほど…」
忍者すげぇ…
人並み外れた嗅覚をお持ちですね!俺は平々凡々な一般ピープルなものですから!
「…おい」
「は、はい!?」
「何ビビってる。…いいか、今すぐ用具倉庫まで一気に走れ」
「へっ?」
「あそこなら留三郎がいるし、ここから一番近い。忍術学園一武闘派とかほざいてる奴だ。それなりに守ってもらえるだろう…」
「それなりとな…」
散々言われてますよとめ先輩。きっと、本人がいたら曲者そっちのけで乱闘が始まるだらう。それはそれで、曲者さんもやる気失せるよ。失せてもらわないと困る。
「走れ!」
「ぅぉあっはいぃい!!」
肩を突き飛ばされ、転びそうになりながら俺は走った。
早く、早く、助けを呼ばなきゃ。
―また、逃げるの?
今の俺じゃ、足手まといにしかならないよ。
―どうして強くなろうとしないの?
どうやって強くなる?
―助けられて、その人を犠牲にするなんて嫌だ。人の背中に隠れることが、悔しい
もう、やめてくれ。囁きかけないで。俺に何を求めてる。何をしようとしてる。これ以上、俺という存在を揺るがさないで。