恨み辛みの果て

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「えっ…雅先輩…!?」
「おー、たっきー&三木ヱじゃないか」
「なんですかそのタッキー&みたいなの。こんな自称アイドルと一緒にしないでください!」
「それはこっちのセリフだ!こんな自惚れ屋とセットなんて、まっぴらごめんだね!それに、その微妙な名前の切り方止めてください!」



だって2人セットで学園のアイドルだもの。可愛いぞお前ら。なぜみんなが敬遠するのか、俺には理解できん。とりあえず頭なでなで…



「…ってそうじゃありません!」
「そうだ!雅先輩、噂は本当だったのですね!?」
「噂とな?」
「はい。雅先輩が、忍術の勉強をしているって。昨日も体力作りしていたらしいじゃないですか」
「危険ですよ!雅先輩は私達がしっかりお守りしますから!」



昨日始めたばかりなのに、もうこんなに噂が流れているのか。別に困ることはないけど、こうもやめろやめろと言われると、なんだか悲しくなっちゃうよ。そんなに先輩を虐めないで…



「ていうか!何で先輩は1人でのこのこ歩いてんですか!曲者に殺してくれと言っているようなものじゃないですか!」
「えー?」
「本当に危なっかしい人ですね…僕が用具倉庫まで安全に連れて行きましょう!」
「待て三木ヱ門。雅先輩を無事送り届けられるのは、学問も武術も学園No.1のこの私だ!」
「なんだと!?」

「じゃあ2人についてきてもらうよ」



ナイス俺。
きっと、あのまま止めなかったら喧嘩が長続きした挙げ句逃げ出せなくなってとめ先輩に怒られる。最初の曲者事件から今まで、これと言って狙われたりしていないから大丈夫なのに…























――――――…



「遅い!」
「すみませーん」



用具倉庫に着いて早々に叱られました。遅れたって言っても、たったの5分なのにねぇ。



「あ〜っ雅先輩が忍たま用の制服着てるぅ!」
「ほんとだーっ」
「…そういえば、雅先輩…昨日潮江先輩と筋トレしてるの見ましたよぉ…」



3人は、俺の周りにまとわりついてくる。喜三太もしんべヱも平太も、俺が忍術の勉強をすると聞いて、喜んでくれた。

ただ、1人を除いて…



「な…んで…っ…」



ただ1人、作兵衛は信じられないと言わんばかりに目を見開いて、驚きの色を隠せていない。声が震えて、それ以上言葉を紡ぎ出せないようだ。



「っ…食満先輩…」
「どうした?」
「…具合が悪くなってきたので…今日はもう部屋に戻ります…」
「おお…そうか…大丈夫か?」
「作兵衛、部屋まで送ろうか?いや、それより医務室に行っ「っ結構です!!」



肩に置こうとした手を思い切りはね退けた作兵衛は、長屋のある方へ走って行ってしまった。その姿を、一年生の3人は心配そうに見送り、とめ先輩は小さく息を吐いていた。



「…そんなに具合悪かったんですかね?」
「バカ」
「なっなんですとッ!?」
「とにかく修行を始めるぞ!平太、喜三太、しんべヱ!用具倉庫の鍵を吉野先生に返しておいてくれ」
「「「はーいっ」」」



…そんなに似合わなかったかなぁ、この色…うーん…
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