恨み辛みの果て

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――――――…



「死んだ…?」



雅は、目を瞬かせた。


そりゃそうだろうな…
天女と同じ方法を使ったって、その先にあるのは………死…



「殺したんだ…」
「…冗談ですよね?だって、藤内は消えたって…死んだなんて一言も……誰が、そんな」
「この事を知ってるのは、六年生と…作兵衛だけだ…」



今でも、はっきり覚えている。

血生臭い匂い。雨も降っていないのに濡れた地面。ぐちゃり、ねちゃりと耳を刺激する嫌な音。
月明かりに照らされた、血濡れの後輩とぐちゃぐちゃになった天女。

あの時初めて、俺は自分の過ちに気がついたんだ。たった1人の女のために、実の妹のように可愛がってきた大切な後輩を殺した。あの悲惨な情景を見て一番最初にしたことは、作兵衛が女を殺したことに驚いたわけでもなく、雅が死んだという事実を認識しただけだった。



「天女は……作兵衛が…殺した…」
「!」
「雅が死んだ次の日の明け方に………悲惨な光景だった…」



俺が雅に止めをさしたように、作兵衛は天女に止めをさした。天女のことなんてどうでもいい。あいつはただ罰せられただけなんだから。だが雅はどうだ。雅は必死で学園を守ろうとしただけなのに、罪を犯したのは俺達なのに、無惨な死を遂げたのだ。

そうだ。死んだんだ。天女も雅も。

だが、雅は居る。目の前に、居るんだ。



俺は、そっと雅を抱き締めた。



「元の世界に戻りたいなら…俺も協力する…」
「先輩、」
「だから…死なないでくれ…」



小さい。
抱き締めた体は、少しでも力を入れたら崩れそうだ。

…そう言えば、仙蔵がよく言っていたな。“雅は桜のように儚い存在だ”と。正にそうだ。

呆気なく死んでしまった。

今回だって、何の前触れもなく消えてしまうんだろう。



「先輩、教えてくれてありがとうございます」
「、雅…?」
「みんな、天女のことは伏せたがるのに、とめ先輩だけは教えてくれました。俺は、それだけで十分です」



雅、お前は生まれ変わっても笑顔はそのままだな。

だからこそ俺は、お前をすぐに受け入れられたんだ。
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